|
年間講演依頼100本超！
|
| こんにちは、米国NLP心理学協会認定ビジネスマスター・コーチの酒井とし夫です。街中で見かけた商売繁盛のヒントや交渉・セールス・集客に役立つビジネス心理学スキルをお届けします。最後まで興味深く読んで頂き仕事と人生にすぐに活かして活用してください。 |
| ※講演依頼・講師依頼で実績の豊富な酒井とし夫の講演詳細はこちらをクリックしてください。 |
■ビジネスで使える心理学 テクニック1 ＜フィア・アピール＞ 人間は快楽を求め、苦痛を避ける生き物です。そして快楽を求めて行なう行動より、苦痛から逃れるための行動の方がパワーが強いと言われています。そのためマーケティングでは「意図的に見込み客に恐怖を与え、それに対する救済措置を提示する。」というフィア・アピールと呼ばれるセールス手法がよく使われています。 生命保険会社のＣＭで「一家の大黒柱であるあなたがガンになったら家族は路頭に迷ってしまいます。備えあれば憂いなし。今すぐ資料請求を！」というのは明らかにフィア・アピールです。一時的に不安、恐怖を抱く状態を作り出し、その不安や恐怖から逃れるための救済措置を提示しているのです。不安な状況下では親和要求が発ししやすく、そこで救いの手を差し伸べると、「地獄に仏」状態となり、見込み客を意図する方向へ誘導することが比較的容易になります。 （フィア・アピールは使い方を間違えると、悪徳商法や詐欺につながります。絶対に社会規範や人間倫理に反する使い方はしないで下さい。） フィア・アピールとビジネスを関連付けて話をすると、「人を不安にさせて商売するなんで邪道だ。」という人がいます。でも、これは良い悪いの議論ではなく人間心理と事実についての話です。意識する、しないに関わらず、セールスの現場では「今どき英語も話せないようでは、リストラ候補ですよ。」とか「パソコンなんか使えて当たり前の時代ですよ。未だに使えないのですか。」「他のライバル企業はとっくの昔に導入済みですよ。早くしないと負けますよ。」という会話が日常的に使われており、こういったセールストークに続いて英会話教材の申し込みやパソコンの導入が薦められます。これもフィア・アピールです。フィア・アピールを知っていて意図的に使っているのか、経験的に無意識に使っているのかの違いだけです。 テクニック2 ＜好意の返報性＞ 人間は自分に好意を持ってくれる人が好きです。当たり前ですね。そして好意を持ってくれる人に自分も好意を持ちます。これが好意の返報性です。「あなたの生き方は絶対に間違っている。」「あなたのビジネスに対する姿勢はお粗末である。」「あなたの考え方も、行為も全て無駄である。」なんて言われて喜ぶ人は少ないです。自分を拒絶、否定されて良い気持ちになる人は少ないのです。それよりも自分を認めてくれて、好意的に接してくれる人を好きになるのが一般的です。そして、好意的に接してくれる相手の言う事を拒絶するのも難しくなるのです。これを好意の返報性と言います。 スモールビジネスで成功しやすいビジネスは悩みを持つ人を助けてあげるビジネスです。しかし、見込み客が「一生懸命やっているのに上手くできない。」と悩んでいる見込み客に対して「そんなやり方じゃダメですよ。何でそんなことしているんですか。馬鹿だなあ。いいですか、ほら、こうやるんですよ。」という対応は上手くありません。これでは相手を否定してから提案をしていることになります。 あなたは自社の広告物やセールスに際してこのように相手を否定してはいけません。好意の返報性を考慮するなら、まず、「一生懸命やっているのに上手くできない。」と悩んでいる見込み客に対して「そうですか。そんなに頑張ってこられたんですね。大変でしたね。私にも同じような経験があるので辛さはよく分かります。あなたは純粋な方だし、努力家なのですね。とても素晴らしいことです。私はあなたのように何事にも真面目に取り組む人が大好きです。きっと、あなたのやってきたことは無駄にはなりませんよ。必ず、今後の生活（ビジネス）で役に立つはずです。でもね、私もある時に気がついたんですけど、努力って正しい努力と、間違った努力があるんです。だからあなたの努力も方向さえ軌道修正してあげれば、きっと上手くいくはずなんですよ。それはね、ほら、こうやるんです。」 というように相手を受け入れて、相手に好意を示してから、提案をするのです。これはチラシでもＤＭでもトークでも同じです。 テクニック3 ＜片面呈示と両面呈示＞ 社会心理学は広告や宣伝効果における人間心理の影響までをもその研究対象とする場合があります。 その中で有名な理論が「片面呈示」と「両面呈示」です。例えば、商品やサービスの長所や利点だけを呈示するのは「片面呈示」になります。「両面提示」とは、その商品やサービスの長所や利点だけでなく、欠点、短所などネガティブな部分も呈示する方法です。 店頭で家電を販売する際に 「このＤＶＤプレーヤーは大容量のＨＤＤを内蔵していますので長時間録画が可能です。また、ＥＰＧを搭載していますので録りたい番組を探して、番組を選ぶだけで簡単に録画予約も出来ます。 ＮＥＷディーガエンジンなので搭載 録画・再生・ダビングも超キレイで機能充実のお薦め商品です。」と説明するとこれはメリットのみを強調した片面呈示になります。 一方、 「このＤＶＤプレーヤーは大容量のＨＤＤを内蔵していますので長時間録画が可能です。また、ＥＰＧを搭載していますので録りたい番組を探して、番組を選ぶだけで簡単に録画予約も出来ます。ＮＥＷディーガエンジンなので搭載 録画・再生・ダビングも超キレイです。但し、高機能なため操作が少し複雑です。そのため使い始めは操作に戸惑われるかもしれません。また、高機能な分、他の製品より価格が高くなっています。」と説明するとこれはメリットとデメリットを説明した両面呈示になります。 この「片面呈示」と「両面呈示」に関しては説得する相手の元もとの態度が説得方向と同じ場合には片面呈示の方が効果があり、反対の場合には両面呈示の方が効果的であると言われています。 つまり、既にその商品を買う意思がある人に対しては片面呈示が効果的であり、その商品を買うことに反対の立場を取る人に対しては両面呈示が効果的であるいうことです。また、説得の内容に対して高い関心や問題意識を持っている人、インテリ層には両面呈示が、そうでない人には片面提示が効果的であるとも言われています。 従って、広告宣伝を行なう際には自社のターゲット層が商品やサービスについてよく認知していない場合やすでに購入意欲が高い場合には片面提示、ターゲット層が当該商品やサービスについての知識を有して、比較検討の段階にいる場合、購入に際して懐疑的な場合には両面呈示を行なう方が効果的と言えます。 テクニック4 ＜外見＞ 「人は見た目ではなく、中身で判断しなさい。」とか「人は見た目によらない。」等と言われます。これは裏を返せば、「人は見た目で判断する傾向がある。」ということです。 通常、お医者さんは白衣ですし、社長はスーツですし、工場作業員は作業着です。もし、社長が白衣で、工場作業員がスーツで、お医者さんが作業着だったら異質ですよね。人間は見た目でかなりの判断をしてしまいます。心理学の研究からも「身体的な魅力が性格の良さや社会的成功を収めるか否かの判断に影響する」ことは明らかになっています。 私は広告の制作ディレクターをしていた時期があります。当初はスーツでクライアントを訪問していたのですが、ある時からカジュアルな服装に切り替えました。本当に不思議なのですが、それ以降、コンペのプレゼンテーション（競合他社と競って制作の仕事を頂くために「当社ではこういった企画や制作ができます。」という説明をクライアントに向けてすること。）に負けなくなりました。 それまでスーツを着ていた時にはプレゼンテーションをしてもクライアントから「ここはどうするの？」とか「これはちょっとイマイチだなあ。」とか言われることが多かったのですが、私服にしてからは、「プロにお任せしますよ。」とか「デザインのことについては専門家にお任せします。」といったことを言われることが多くなり、連戦連勝で仕事を受注できるようになりました。 心理学にはハロー効果と呼ばれるものがあります。ハロー効果とは「ある特定の項目で際立った要素、項目、条件が他の評価項目にも影響を与えること」です。これによれば見た目の印象がよければ、性格や能力まで影響を及ぼすことになります。アメリカの大統領選挙で立候補者が容姿や外見に気を使い、イメージを大切にするのもこのためです。 長期的にはその人の本質的な性格や技量が徐々に重視されますが、短期間的には第一印象や容姿、見た目は軽視できません。人間は相手の体格、容姿、顔、服装から多くの影響を受けています。これはビジネスでも同様です。 例えば、企業向けの士業（税理士、司法書士、社会保険労務士等）をビジネスとしている場合について考えてみましょう。 自分はラフで気軽な町の税理士を目指していたとしても、お客さんがあなたに望んでいるのは「信頼が出来て、真面目で誠実な人」です。だから訪問時の服装はスーツが基本です。色は紺系か黒です。ＴシャツとＧパンではお客さんが望んでいる理想像に合わないのです。（これを逆手にとる人もいますが・・・。） 従って、あなたがホームページ上やパンフレットであなたやスタッフの顔写真の掲載を行うのであれば、真面目な感じの写真が基本です。下方向から撮影するとアゴが上がって、お客さんを見下ろした感じになるので、アングルはやや上からです。また、背景にも気を配ります。背景にはパソコンや専門書が並ぶ書棚が基本です。また、肩書き、資格、学歴、職歴、居住地等についても詐称はいけませんが、結婚式での仲人が新郎新婦を紹介する程度には脚色が必要なときもあります。つまり、「○○大学を優秀な成績で卒業」「○○プロジェクトチームの中心的存在として活躍」といったものです。 ビジネスを行う際にもチラシやＤＭ、販促ツールにはあなたやスタッフの写真を入れるべきですが、その写真はお客さんが望んでいる理想像に当てはまるイメージを持った会社やスタッフの写真であり、なおかつ魅力的に見えるように工夫をすべきです。そのために笑顔、背景（書棚・パソコン・眺望・店舗・器具等）、服装、髪型、眼鏡、ジェスチャーに気を配りましょう。あなたが考える以上にお客さんにとっては「外見は重要」なのです。 テクニック5 ＜限定条件下の事実＞ ある一定の条件の下においてのみ、当てはまる事実を「限定条件下の事実」といいます。例えば「この人はうちの部内で部門１位の売上げを叩き出した会社員です。」と言われるとどんな印象を持ちますか？もの凄いヤリ手のエリートサラリーマンに聞こえませんか。でも、その会社には３０以上の部署があり、彼は売上げ実績最下位の部署内での売上げNo.１で、しかもその売上げは身内の関連会社からの期末調整のため棚ボタ式にもたらされた売上げであったとしたら、どうでしょう。印象はずいぶんと違ってきますよね。でも「部門１位の売上げをたたき出した会社員！」という表現は嘘ではなく事実です。この場合には「その部署」においてはNo.１の売上げであることには間違いないのです。こういった特定の条件の下での事実のことを「限定条件下の事実」と言います。 これは書籍や映画の広告で良く使われます。「○○書店１０月度売上げNo.１の本」とか「アマゾン ビジネス書部門で１位を獲得した本」、「公開後３週間の売上げ歴代１位の映画」とか「２０代の女性が選ぶNo.１（読者５０人の電話調査）」などというのも全て「限定条件下での事実」を利用しています。 自動販売機の特定のメニューボタンに「売れ筋 Ｎｏ．１」というシールが貼ってあるのも、飲食店で「当店の一番人気メニュー！」と書かれたお品書きが壁に貼ってあるのも「限定条件下での事実」です。 人間は「Ｎｏ．１」とか「ベスト１」という表現を聞いただけで反射的にプラスのイメージを持ちます。「全社内売り上げ３０位！」より、「部門１位！」の方がインパクトがあるのです。 ビジネスでこれを応用すると広告物には「最も売れ筋です！」「当店の売れ筋商品Ｎｏ．１」「先週のオーダー ベスト１」「店長が薦めるＮｏ．１」「よく売れています！」「当店人気アンケートNo.１」といった表現で、「限定条件下の事実」を表現し、商品やサービスの「凄さ」を感じてもらうと効果的だということになります。図は「限定条件下の事実」実例です。 テクニック6 ＜イエス誘導法＞ 人間は相手に対して何回か賛同の態度を示すと、その後には反対意見を唱えたり、反論しづらくなる傾向があります。これを利用して意図的に相手の答えが「イエス」となる質問を折り込んだ話法をイエス誘導法といいます。人間は相手の質問が意図的であったにせよ、何回か「イエス」と答えて同意を示した後では、逆の立場である「ノー」を表明しにくい心理状態になります。 ビジネスでは次のような応用例となります。 売り手：「生活を豊かにするために食生活は大切ですよね？」 買い手：「はい。」 売り手：「マズイものより、美味しいものが好きですよね？」 買い手：「はい。」 売り手：「あなたはいつまでも健康でいたいと思いますか？」 買い手：「はい。」 売り手：「美味しくて、しかも健康を考慮した料理が手軽に楽しめたら素敵ですよね？」 買い手：「はい。」 売り手：「ここにとても美味しくて、中高年の健康に配慮したデリバリー・料理の情報誌をお持ちしたのですが、少しお話をさせていただいても良いですか？」 買い手：「・・・・・」 という流れになります。 この後、情報誌を提供したり、試食モニターをお願いして、返報性や一貫性の原理と組み合わせてセールスを行なうことになります。 これを最初から 「こんにちは。とても美味しくて、中高年の健康に配慮したデリバリー・料理の情報誌をお持ちしたのですが、少しお話をさせていただいても良いですか？」 という切り出し方ではお客さんも「ノー」と言いやすいのです。最初に「ノー」と言わせてしまったら、お客さんは「ノー」という立場を固持することになり、「イエス」という逆の立場に誘導することは難しくなるのです。「ノー」の立場で一貫性の原理が働くのです。 ビジネスでもこのテクニックは使えます。例えば、ダイエット商材を販売する時に「あなたは醜く太りたいですか？」といった「ノー」を誘導するコピーや文面で説明に入るのではなく、「簡単に楽に体重を落とせたら良いと思いませんか？」「お子さんの友達にきれいなお母さんだと思われたくありませんか？」といった「イエス」と答えられる文章から見込み客にアプローチした方が理にかなっているということになります。 下図はこのイエス誘導法を利用したマーケティングの事例です。これらの事例内では「Ｗｅｂコンテンツの管理、もっと楽をしたいと思いませんか？」「メルマガで他人より稼ぎたいと思いませんか」「国民健康保険税、高すぎると思いませんか」「あなたのまちをもっと良くしたいと思いませんか？」といった問いかけがなされていますが、これらは全て答えが「イエス」になります。「ホッとしたいと思いませんか」のように商品名自体がイエス誘導法になっている商品もあります。 これらのテクニックはチラシ、ＤＭ、パンフレットですぐに利用することができます。（次ページ参照） 見込み客を探す段階で使える心理学 テクニック7 ＜自己知覚と態度変容＞ 人間は「楽しいから笑い」ますが、「笑うから楽しい」場合もあります。同様に「悲しいから泣く」場合と、「人間は泣いているから悲しいと感じる」場合があります。 一般的には「心→身体」の順序のみが認知されていますが、人間は「身体→心」の順でも影響を受けるのです。 異性と２人で遊園地の絶叫マシーンに乗ったり、お化け屋敷に入った後で２人の仲が急に親密になる場合があります。また、ドライブに出かけた後で仲良くなる場合もあります。絶叫マシーンに乗っている時や、お化け屋敷にいる時、高速でドライブしている時には心臓が「ドキドキ」しますが、人間はこの「ドキドキ」は「絶叫マシーンでこれから急降下することに対してのドキドキ」なのか、「好きな相手と一緒にいるためのドキドキ」なのか区別がつかないと言われています。 そのために「私はドキドキしている。だからきっとこの人が好きなんだ。」というように自分の身体の状態（＝ドキドキ）や行動を自分で知覚して、その判断に基づいて自分の心（＝好き）を決めるようになると言われています。「好きだからドキドキする。」のではなく、「ドキドキするから好き。」ということです。 これを「自己知覚による態度変容」と言います。 つまり人間は「楽しいから笑う」ことと「笑うから楽しい」ことの区別は明確には出来ないということです。こういった心理学的な理論に基づく行動は潜在意識のレベルでの影響を人間に与えていますので、にわかには信じられないかもしれません。でも、自分を含めて周りの人間の行動を観察すると「身体→心」の順で影響を受けて、行動を行っている場面を多く見つけることができます。例えば、ある商品が欲しいとします。その商品が近所のコンビニで買えた場合と、その欲しい商品が近所では見つからず、東京中を一日中歩きまわってやっと見つけた場合に、あなたはどちらの商品に価値を見出すでしょうか。おそらく後者の商品だと思います。 何故なら「何時間もかけて、探して、探して、苦労して、やっとの思いで手に入れた。」からです。「モノ自体の価値」ではなく、「モノの価値」は「苦労して手に入れたのだから価値のあるものであるはずだ。」という認識の仕方をするのです。これも「身体→心」の順序が人間に影響を与えていることになります。 「身体→心」の影響はビジネスや社会生活のシーンでは次のような場面で見受けられます。寄付を募る時に、最初から「寄付をお願いします！」というアプローチではあまり寄付は集まりません。そこで「環境保護活動賛同の署名をお願いします。」というアプローチでまず署名を書いてもらった後に、「ご署名ありがとうございます。環境問題に意識の高い方なのですね。今、環境保護活動のための５百円募金を行なっています。ご寄付をお願いいたします。」というアプローチにすると、環境保護活動に賛同するという身体を使った「署名」を行なっているので、自分は環境問題に関心の高い人間なのだという心が生まれ、結果として環境保護活動のための寄付をせざるを得なくなるのです。まず「署名」という行動をさせて、後で心に影響を与えるのです。 また、絵画販売等でもぶらぶら見ているとスタッフが寄って来て「絵はお好きですか？」「ご自分の部屋には飾るとしたらどちらの絵がお好きですか？」と聞かれます。その質問に対して「私はこっちの絵が好きです。」なんて指差したりします。その行為自体が潜在意識に影響を与えていることになります。 「指差した行為」を認識して、「あっ、俺はこの絵が好きなのだなあ。」と自分の態度を決め始めます。その後、「素敵な絵ですよね。」などと後押しされると、その絵が好きであると表明したことに対して一貫性をとろうとして、徐々に後戻りできない状態になっていきます。その後、「自分のお気に入りの絵がご自宅の居間に飾ってあったら素晴らしいと思いませんか？」といったイエス誘導方でセールストークが続くことになります。 こういった計算された一連の流れに基づく説得が日常的になされているのです。 折込チラシで「ご希望の方には無料サンプルをお届けいたします。なお、無料サンプルは数に限りがございます。真剣に健康について考えていらっしゃる方のお申込みをお待ちしています。」という文章もこの理論に基づいています。もし、あなたがノーマルな精神の持ち主であれば「真剣に健康について考えてもいないのに、数に限りのあるサンプルを申し込む」には少なからず抵抗があるはずです。逆に「申し込むという行為をした時点」で自己認識して、「私は健康について真剣に考えている人間なのだ。」と自分の態度を決めるのです。 マーケティング書籍でよく取り上げられる「２ステップ販売」（最初から商品やサービスを売るのではなく、最初に資料や小冊子、サンプルなどを進呈してから、セールス活動に入るマーケティング手法）ではセールスの前段階で無料サンプルや資料の提供を行なうことになりますが、この段階で行為が心に影響を与えることを理解していると、「ご希望の方は資料をご請求下さい。」といったコピーではなく、「○○について真剣に考えている方は資料をご請求下さい。」とか「○○について真面目に取り組んでいる方からのご応募をお待ちしています。」というコピーの方が優良な見込み客を集めるフィルターとなることが分かります。 一般的には「ご希望の方は資料をご請求下さい。」といった案内で「広く門戸を開放」した方が多くの集客が可能になるように思いますが、「広く門戸を開放」した場合には、「その商品やサービスを本当に必要としていない」人たちまで集客することになりますので、サンプルコストの上昇や広告費の負担増となり、結果的には収益を圧迫することになります。 「○○について真剣に考えている方は資料をご請求下さい。無料で詳しい資料を差し上げます。」というコピーに反応して、資料請求した場合には「私は○○について真剣に考えている」という自己知覚を引き起こします。 その後、 「○○について真剣に考えている方であれば、□□□の必要性が十分に理解できるはずです。」 ↓ 「○○について真剣に考えている方にだけ□□□を特別価格でご案内いたします。」 といった一貫性のある流れに誘導することが可能となるのです。これは次に説明する「一貫性」の原理にも当てはまります。 これらのテクニックは通販会社、健康食品会社、化粧品会社が良く使って効果を上げているテクニックです。もちろん小さな会社やお店の広告、マーケティング活動でも有効です。 テクニック8 ＜一貫性＞ 人間は自分の意見や行動に一貫性を持たせようとします。これは社会生活においては考えや行動に一貫性がないと信頼を得ることが難しくなるからです。逆に言うと「人間というのは一旦決めたこと、表明した立場、考えたことを変更するのは難しい。」ということにもなります。 何か商品を買う場合に「申し込みをする→頭金を払う→納品される→残金を支払う」という流れがあるとします。この流れには「申し込む」と決心した自分の行動に一貫性があります。一般的に人間はこういった一貫性を保持しようとします。そのため、「申し込み」をした後や「頭金」を払った後には「キャンセル」がしづらくなります。キャンセルするということは「その商品を良いものだと判断して、購入の申し込みをした」という自分の決断を変更することになるからです。 従って、売る側のビジネス戦略としては購買につながる最初の第一歩を相手に踏み出させるような仕組みがあれば、その後の態度の変更の可能性は少なくなるということになります。つまり、いきなり申し込みをさせるのは難しくとも、申し込みにつながる小さな第一歩目を踏み出させることができれば、後は一貫性の原理が働いて高い確率で申し込みまで誘導できるということになります。 実際にビジネスに応用した場合には、「とりあえず商品発表会に来てもらう。」「とりあえず触ってもらう。」「とりあえず視聴してもらう。」「とりあえず試乗してもらう。」「とりあえず仮申し込みを書いてもらう。」「とりあえず手付けを頂く。」ということになります。まず望ましい方向の流れに乗せるための第一歩を踏み出してもらうことが重要なのです。 ビジネスにおいては売り込みをかける前に「とりあえず問い合わせてもらう。」「とりあえずアンケートに協力してもらう。」「とりあえず資料請求をしてもらう。」「とりあえず無料レポートや小冊子を読んでもらう。」「とりあえずサンプルを試してもらう。」「とりあえず使ってもらう。」「とりあえず一週間だけ使用してもらう。」「とりあえず小額の商品から購入してもらう。」といったことから一貫性がスタートします。 チラシやＤＭで「すぐに売る」ことを考えずに、まずは「とりあえず問い合わせてもらう。」「とりあえずアンケートに協力してもらう。」「とりあえず資料請求をしてもらう。」ことが結果的に人間を動かすのです。 テクニック9 ＜返報性＞ 私達は一般的に相手から贈り物や招待、接待等を受けると、恩義を感じます。そしてその恩義を「お返し」しないと居心地の悪さを感じます。つまり「もらいっ放し」は「借り」を返していない状態として、自分の心の中でも社会的道徳的にも良くないことである、という一種の刷り込まれた観念が出来ています。 この返報性をビジネスに応用したものが「無料配布」「無料体験」「サンプル」「試供品」「ご招待」「モニター」「試食」です。生命保険会社の「無料で資料差し上げています。今すぐお電話を！」や、化粧品会社の「無料サンプルセットプレゼント中です。是非、お試し下さい！」、スーパー店内の「新発売の発泡酒です。試飲会を行っています。是非、味をお試しください！」も、リース会社の「１ヶ月間無料でご使用いただけます。この足拭きマットを1ヶ月こちらの会社の入り口に置かせて頂くだけで結構です。」も広告やセールスプロモーションの一環だと思われていますが、心理学的には返報性をベースにしています。一旦、これらの恩を受け入れてしまうと断りきれない人が一定数出てくるのです。 このようなプロモーション活動を行った経験が無い方には「そんなことやって効き目があるのかしら？経費と時間の無駄じゃないの？」と思われるかもしれません。でも、経験済みの方はお分かりのとおり、これはかなりの効き目があります。だから、生保、化粧品会社、飲料メーカー、リース会社の優良企業がこぞってこういったプロモーションを常に行っているのです。 ギブ＆テイクだと、最初からテイクすることを前提にした感じがありますが、返報性はどちらかというと「見返りを期待せずにとにかくまず与える。それが人間の心理に大きな影響を及ぼす。そしてその結果として一定の確率で返報が発生する。」という感じです。そのため「与える」という行為から始まるビジネスは結果的に収益につながることが多くなるのです。もちろん「与えた」全員が返報してくれるわけではありません。率としては少ないかもしれません。でも必ず一定の割合で返報する人がいるのです。自社商品の返報率を確かめて、その返報率を計測したうえでコストをまかなうことができるビジネスモデルを構築すれば、「売ろうとしなくても、与えるだけ」で収益が上がるビジネスになるのです。 あなたも「売り」から入るのではなく、まずは「与える」ために、無料情報、無料サンプル、無料モニター、無料試飲、無料試食、無料お試し、無料体験、無料相談等とにかくコストをかけずに実施できることをプロモーションに組み込みましょう。 見込み客フォローの段階で使える心理学 テクニック10 ＜単純接触効果＞ 単純接触効果とは「繰り返しによる出会いが相手に対する好意度を増す。」というものです。Ｒ・Ｊ・モアランドとＲ・Ｂ・ザイアンヌが１９８２年に次のような実験を行っています。女子学生をＡ、Ｂの２つのグループに分けます。Ａグループには１週間に一回ずつ、４週に渡って同じ男子学生の写真を見せ続けます。そして毎週その男子学生に対する好意度を調べます。Ｂグループには１週間に一回ずつ、４週間毎週違う男子学生の写真を見せます。こちらも毎週その男子学生に対する好意度を調べます。 毎週調べた男子学生に対する好意の度合いはＡグループの女子学生は写真の男性に対する好意度が毎週上がっていったのに対して、Ｂグループの女子学生は写真の男性に対する好意度はほとんど変わりませんでした。この研究結果から、繰り返しの出会いは相手の魅力や好意に影響を与えると考えられるようになったのです。これを単純接触効果と言います。 これをビジネスに応用したものが、営業マンが上司によく言われる「仕事が無くても毎日お客さんのところへ行け！」です。営業を経験した事のある方なら、仕事が無くても「こんにちは！！」と、毎日お客さんに顔を会わせる事によって、お客さんの心に好意が生まれるのは経験的にご理解いただけるはずです。 またマーケティングでも「見込み客に対して７回から２５回の接触機会を持たないと見込み客は購買に至らない。」という説があります。この単純接触効果をビジネスで活かすには見込み客に対して何回も手紙やＤＭ、メール等を使ってフォローをすることになります。 広告等で自社の事を知った見込み客に対して、最低７回の接触を試みようと思った場合には例えば次のような接触が考えられます。 1. 地域広告で資料請求をさせて１回目の接触 2. 資料郵送時に手紙を同封して２回目の接触 3. 「資料はお手元に届きましたか？」という電話やＤＭで３回目の接触 4. 新製品のご案内のフォローＤＭやメールで４回目の接触 5. 展示会、発表会、ご招待のご案内ＤＭで５回目の接触 6. 展示会、発表会、ご招待の場で６回目の接触 7. 展示会、発表会、ご招待への「ご来場ありがとうございました。」という電話やＤＭで７回目の接触 また、インターネットで資料請求をさせて、メールを利用して全５回程度のミニセミナーや情報の配信を行なっている企業もありますが、これも接触回数は最低でも５～７回行なう企業が多くなっています。 「繰り返しによる出会いがあなたの会社やお店に対する好意度を増す。」ことになりますので、一回の広告宣伝、販促活動に予算を集中させるのではなく、同じ予算を使うなら最低でも５～７回の接触を生み出すような広告宣伝、販促活動を予め計画すべきです。 テクニック11 ＜類似性＞ 私達は自分に似ている人を好む傾向があります。例えば「同県出身」「同じ大学出身」「同じ職種」「同年代」「性格が似ている」「考え方が似ている」「経歴が似ている」「趣味嗜好が似ている」「ペットが同じ」であれば共感を得やすく、親近感がわきます。人間には共通項を見出すとお互いに良い印象を持つ傾向があるのです。 社会心理学では態度の類似性という考え方があり、２者が会話をしている時にはお互いの態度（意見や考え）が似ていればいるほど相手に好意を抱く率が高まると言われています。ビジネスにおいても見込み客から好意を得られれば、その後のビジネスの展開が有利になります。では具体的にはどのようにして見込み客との類似性を出せば良いのでしょうか。 スモールビジネス成功の基本は悩んでいる人に解決策を提示する「悩み解決型のビジネス」ですが、この場合、見込み客は何らかしらの原因で悩んでいるわけですから、その人に向かっていきなり「私はこんなに上手く行きました。成功しました！私はやりました！！私は素晴らしい！！！」と語りかけても、相手は類似性を発見できないので、共感を持ってもらうことは出来ません。 「悩み解決型のビジネス」ではチラシやＤＭでも「実は私自身も○○でずっと悩んでいたのです。」「何年にも亘って○○に失敗してきました。」「私は今では何とか上手く出来るようになりましたが、実はつい昨年まではスランプのどん底にあり、夜も眠れずに悩んでいたのです。」「私は手取り２０万円のフツーのしがない会社員だったのです。」「深夜に帰宅して風呂に入って飲む１本の発泡酒だけが私の楽しみだったのです。」「ズバ抜けた能力もコネもお金も無い、ナイナイずくしの私に残されたものはこれしか無かったのです。」「これを読んでくださっているあなたと同じように悩んでいたのです。」といったように、見込み客と同じように悩み続けた経験がある事を正直に語るほうが共感を得られることになります。 そのため、チラシやＤＭ、ホームページ、手紙ではあなたの会社やあなたの失敗談、悩んだ経験、恥ずかしいと思っている過去の情けない思いでもさらけ出すようにしてください。馬鹿にされたこと、お客さんに怒られたこと、劣等生であったことや、貧しかったこと、恥ずかしかったこと、落ち込んだこと、情けなかったことを正直に告白しましょう。（自分をさらけ出すことは心理学の「自己開示」という理論にも当てはまります。これは自分の内面を相手に見せることにより、相手は親近感、好意を持ってくれるという理論です。） また、インターネットビジネスにおいてはホームページ上で自分や自社に関する詳細で具体的なプロフィールページも必ず用意してください。ここにあなたの会社やあなたの詳細なデータを載せます。これは詳細なプロフィールから見込み客が自分との類似点（学校、年齢、家族構成、経歴、出身、趣味等）を発見するために必要なのです。出身地や卒業校、趣味が一致すると相手の心にあなたに対する親近感が湧くのです。 テクニック12 ＜ポジティブ表現＞ 「消極的」「落ち着きが無い」「協調性が無い」等の言葉からはマイナスのイメージを受けますが、それぞれ「思慮深い」「活動的」「独立心が強い」等の表現に変えるとマイナスのイメージが払拭され、プラスのイメージが出てきます。こういった表現の仕方をポジティブ表現と言います。 同じ商品やサービスでもポジティブな表現を用いた場合とネガティブな表現を用いた場合では、お客様が受け取る印象が違ってきます。売り手から見て商品のマイナスポイントと思われることでも、買い手からはプラスのポイントとして認識される場合も多いものです。売り手は「この商品はやや重たいのが難点なのですが・・・。」というように、商品の重さが欠点であると思っていても、お客さんは軽々しくなく、どっしりとした感覚を求めている場合もあるので、「重厚感溢れる・・・」といった表現で商品を説明することにより、売り手から見てのマイナス点もプラスに変換することができる場合が多いのです。 写真は通販生活（発行 株式会社カタログハウス）で毎年売れ筋商品上位にランクされるオイル内蔵型パネルヒーターです。この商品はもともと「構造的にあまり暖かくならないヒーターなので、それまでわが国のデパートではさっぱり売れていないヒーターだった。」（「なぜ通販で買うのですか」斉藤駿著／集英社新書）らしいのですが、「構造的に暖かくならない」を「温風を出さないから、のどが痛くならない。」という特徴に表現しなおし、寝室用の暖房器具として売り出したところ人気商品となったそうです。 「納期が遅い＝丁寧に仕上げるのでお届けに時間がかかる。」「重い＝重量感溢れる」「古い＝歴史と伝統のある」等、ビジネスにおいては広告宣伝活動においては自社、自分、商品、サービスをポジティブに表現したアピールを心がけましょう。 申し込みの段階で使える心理学 テクニック13 ＜フット・イン・ザ・ドア＞ フット・イン・ザ・ドアは段階的要請法と呼ばれ、訪問販売員にとっての初歩的なセールステクニックの一つになっています。フット・イン・ザ・ドアは「初めから大きな依頼をするよりも、まず小さな承諾を得て、その後に大きな依頼をした方が、人間はその依頼を承諾しやすい。」という理論です。 男女間の関係においてもいきなり「結婚してください。」という人はいないですよね。普通は「今度、映画にでもいきませんか。」「一度、お食事にでも行きましょう。」という小さな依頼や小さなお願いからスタートします。これも同じ原理です。新聞の勧誘員がで「１週間だけ取ってください。」というのも、スーパーの食品売り場で「味見だけでもどうぞ！」と勧める試食も同じです。（両方とも返報性の原理も働いています。） 最終的な目的は「大」なのですが、最初からいきなり「大」を依頼するのではなく、「小→中→大」の順で依頼を行う、ということです。この理論は買い手の立場から考えても理にかなっています。例えば、普通、消費者金融で最初から１００万円もの借り入れは怖くてできないですよね。でも、数万円なら抵抗感が少なくなります。そして最初は数万円を申し込むのにもあったはずの抵抗や不安も、一旦、壁を乗り越えてしまうと平気で１０万円単位で借りることが出来るようになります。この繰り返しが心理的な抵抗感を徐々に少なくしていくのです。人間にとって最初の障害を越えるのが一番難しいことなのです。 これをビジネスに応用した場合には、最初から高額商品を売り込むのではなく、単価の低い購入しやすい価格帯からセールスするのが定石となります。ある健康関連グッズの販売で年間数十億円を売り上げている社長がセミナーで「一般消費者向けの商品は商品単価７，０００円台から始めるのが基本。」とおっしゃっていました。これも単価の低い購入しやすい価格帯からセールスを始めているわけです。 また、ある著名なコンサルタントは２００万円のビデオを主力商品として販売していますが、このコンサルタントが最初に勧める商品は５，０００円のカセットテープです。これもフット・イン・ザ・ドアを利用してまずは小さなものから承諾を取っているのです。２００万円のビデオは内容のしっかりした質の高い商品ですが、いくら質が高くても最初から２００万円を出す人は少ないはずです。 フット・イン・ザ・ドアとは逆に「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックがあります。これは「最初に大きな依頼を行い、その後小さな依頼を行なう。」というものですが、これは一人のお客に対して一回の販売しか行なわない場合には有効です。しかし、既存客に何度もリピート購入してもらったり、フロントエンド商品の購入から、バックエンドの高額な商品の購入まで誘導し、長期間に亘って一人の顧客から得る利益総額を大きく伸ばすことによって会社の利益を増大させるビジネスではフット・イン・ザ・ドアの方が有効だと思います。 そのため、小さな会社やお店は商品構成を考える際に、価格帯としてはまず「小額」な商品を用意し、その後の「中額」「高額」商品への誘導を図ることのできる商品戦略を考える必要があります。 この経営コンサルタントのセミナーでは数千円のカセットテープ販売用のチラシしか配布されませんが、年間で数億円の利益を稼ぎ出しています。最初は数千円でも、その顧客は２回目、３回目の買い物ではもっと高価な商品やサービスを薦められた場合には、初めてあなたの会社やお店から商品を買うときほどには「抵抗」が無くなっているのです。これがフット・イン・ザ・ドアの原理の威力です。 テクニック14 ＜コントロールの錯覚＞ 「これがお薦めです。」と店員に勧められて買った商品と、「どちらもお薦めですが、ＡとＢどちらがよろしいですか。」と言われて買った商品の場合に、人間は後者の勧めで購入した商品により価値を感じるといわれています。 飲食店には「松・竹・梅」のお品書きがあります。「特上・上・並」もあります。広告代理店はプレゼンテーションでは３案の企画を提示します。結婚式場では複数の披露宴のプランが用意されています。旅行パンフレットでは宿泊ホテルが選択できるようになっています。どれもお客に選択権を与えるためです。そして人間は自分で選んだものに価値を見出す傾向があります。これをコントロールの錯覚と言います。ナンバーズは自分で数字を選択できる宝くじですが、自分で数字を選んだ方が当たりやすいように錯覚します。これもコントロールの錯覚です。 これをビジネスに応用した場合には商品選択肢は複数用意するということになります。商品は商品アイテム、価格帯別、単体とセットの組み合わせ等で複数の選択肢を提示してあげることです。そして複数の選択肢の数は「３」が基本だとされています。これは昔からの商慣習や経験則的なものだと思いますが、３つ以上の選択肢が存在すると、お客の心の中に選択への「迷い」が生ずるようです。だから世の中には「松・竹・梅」「特上・上・並」「大・中・小」といった３種の選択肢が多く存在するのだと思います。 テクニック15 ＜比較の原理＞ 以前、ＴＶを見ていたらローンで着物一式を買い込んでしまい、返済に困っている女性がインターンビューを受けていました。彼女は着物の他に襦袢・肌着・足袋やバッグ、さらには着付け教室の入校費・学費と着物パーティのチケットまで買った（買わされた）そうです。総額は百万円近くになっていました。 インタビュアーが彼女に「着物だけでも相当高額な買い物なのに、何故、小物や着付け教室まで申し込んだのですか？」と聞かれて、彼女曰く「最初の着物の値段に比べたら、小物や草履、着付け教室代金、パーティ券は安く感じてしまい、言われるままに申し込みをした。あまり抵抗がなかった。」というような話をしていました。 「大きなものと比べると他のものは小さく見える」これが比較の原理です。上記の例では「大きな金額の商品（＝着物）を購入した直後には、他の商品（＝袢・肌着・足袋やバッグ）の金額が相対的に安く思える。」ということになります。フット・イン・ザ・ドアとは逆に最初に大きな価格や価値を提示された後に、小さな価格や価値を提示された場合には、人は実際の差以上に両者の間にある差を大きく感じてしまいます。 スーツを買った直後に、「ネクタイも一緒にいかがですか？」という店員からのセールストークがあるのはこの比較の原理を利用しています。スーツというまとまった金額の買い物をした後では、ネクタイやハンカチ、ソックスといった小物の代金はあまり気にならなくなるのです。 逆に最初にかなり低レベルの商品を見せた後に、並みの質の商品を見せるとその差を大きく感じてしまい、並みの商品であっても後者の商品に価値を見出すのも比較の原理です。広告制作会社や代理店がクライアントに対してプレゼンを行う場合には、最初にダメな案を提示し、２番目に本命の提案をするのは定石です。これも比較の原理を利用して、「この中では２番目が最高だね。」と相手に感じてもらうためです。同様に不動産業者が最初にボロボロの物件を案内して、次に売りたい物件に案内するのも比較の原理を応用しています。 これを自分のビジネスで応用する場合には、例えばお客さんにまとまった価格の商品を購入していただいた時に「ご一緒にこちらもいかがですか！」とクロスセルを提案することになります。これはマクドナルドで行われている「ポテトもご一緒にいかがですか！」をイメージすると分かりやすいと思います。自動車の購入を行なう際にも契約の席上で「マットレスはお付けしますか？」「カーナビはどうですか？」とセールスされるとついプラスして購入してしまうのもこの比較の原理を利用しています。 また、応用テクニックとして高額商品を相対的に安く感じてもらうためにも利用できます。 「この商品（サービス）にはとても価値があり、その価値と比較すると販売価格はリーズナブルである。」という説明の仕方です。例えで説明すると「一つ一つ手作りで製品として完成するまでに３年以上かかるうえに、世界的にも権威ある章を受賞している。その価値と比較すると決して高くはない。むしろお買い得である。」「その知識を独学で得るには１０年以上の勉強と経験が必要である。その労力と時間と比較するとこの商品は決して高くはない。むしろお買い得である。」「それを自分で手に入れようとするとイタリアまで行って、メーカーと交渉しなくてはならない。その労力や費用と比較すると決して高くはない。むしろお買い得である。」「大切な我が子が将来手に入れる価値と比較すると決して高くはない。むしろ今がお買い得である。」といった使い方をします。 テクニック16 ＜希少・限定＞ 人間は数量が絶対的に不足しているものや、期限を限定されたものにより価値を置く傾向があります。モノが十分にある状態では「いつでも買える。」という気持になり買い手に選択権がありますが、「数や期間に限りがあり、今買わないと手に入らないかもしれない。」という状態では買い手の選択権が制限されてしまいます。 このように「本来自分が持っていて当然の権利」が制限されたり、消滅すると人間は心理的に不安定な状態になります。心理学的にはこの不安定な状態は人間にとって居心地の悪い状態なので、その状態を回復させようとするために人間は希少・限定されたものを手に入れようとする傾向があるとされています。 このような理屈は別にしても日常生活の中で希少・限定されたモノに対しての価値が上がることは経験的に知っているはずです。これをビジネスに応用したのが「限定１０個限り」「先着１０名様限り」「数に限り有り。売り切れの際はご容赦！」「○○台の限定販売です。」「１０日まで開催。お早めに！」「お申込みは○○月○○日○○時までとさせて頂きます。」という表現になります。これはこのままビジネスでも利用できます。希少・限定の原理は今すぐにあなたの会社やお店のチラシやＤＭで使えます。写真はこの希少・限定を利用した広告テクニックの事例です。 テクニック17 ＜社会的証明＞ 人間は自分で正しいと信じた事を正しいと思います。但し、自分の考えが正しいということを客観的、具体的に証明するのはとても難しい作業です。そのため、自分の考えの正しさを、他者の考えとの比較を通して考える場合が多くなります。つまり自分と同意見の人が多いと、「自分の考えは正しい」と判断する傾向があります。また、多くの他者が正しいと考えていることを「正しいと信じる」傾向があります。つまり多くの人が賛同するものや、多くの人が評価するものに価値を置く傾向があります。これを社会的証明と言います。 ブランド品を購入したり、ベストセラー小説を購入したり、ランキング上位のＣＤを購入したり、行列のできるお店で食事をしたりするのも、ＴＶ番組で会場の笑い声が流されるのも、ビジネスでサクラが利用されるのも、全てこの人間心理である「社会的証明」を考慮しています。 あなたがビジネスでこの社会的証明を応用するには「当店の売れ筋Ｎｏ．１」「既に○○人が申し込み！」「申し込み多数のため発送に時間がかかります。」といったコピーを利用したり、「お客様の声」として既存客の声を多く取り上げる、などの方法を取ることになります。（当然、事実である必要があります。） 既存客フォローの段階で使える心理学 テクニック18 ＜認知的不協和＞ 高額の自動車を購入した後や、高価なブランドのバッグを購入した後にその商品についての否定的な記事が新聞や雑誌に書かれていたとしましょう。その時には「別な車を買ったほうがよかったのかなあ。」とか「別のブランドのバッグにしたほうが良かったかしら。」と思ってしまいます。自分が良い商品だと思ってお金を出したものに対してケチをつけられると、自分の意見と他人の意見が一致せず心の中で葛藤が起きます。 その感情を抱えたままでは自分の気持ちの中でバランスがとれないために、「不快な感じ」や「後悔の気持ち」が芽生えます。この時に「あなたの選択は正しかったのである。」という他人の意見があると、「不快な感じ」や「後悔の気持ち」は解消されすっきりとします。これを認知的不協和の解消といいます。そのため自分が買った車やバッグに関する肯定的な意見や、記事をＴＶ、新聞、雑誌等で見かけると安心するのです。この時に「不快な感じ」や「後悔の気持ち」が解消されないとビジネスでは返品やクレームにつながります。 企業によっては商品購入後に認知的不協和の解消を意識してフォローを行なっているところもあります。ご自身で商品を購入すると分かりますが、英会話教材、化粧品、通信講座等の通信販売を行なっている会社で成長を続けている優良企業では必ずこのフォローの電話やＤＭ、メールが届きます。これにより完全保証や返金制度をうたっていても返品率を抑えることができるのです。（当然ですが商品の質に問題がある場合には認知的不協和は解消されませんし、返品率は下がりません。） 具体的には、商品納品後５～１０日後に「商品はいかがですか。ご購入いただいた方の多くに『とても良い商品を薦めていただいて良かった。』と喜ばれています。ご質問がありましたら遠慮なくお問い合わせ下さいね。」といったフォローがあるわけです。また、その後、その商品が取り上げられたマスコミ記事等の紹介や購入者の声、Ｑ＆Ａ形式でまとめられた質問を紹介しています。これらは認知的不協和の解消に役立っているわけです。下図はこの認知的不協和の解消を実行しているマーケティングの事例です。 これは単価１，５００円の石鹸を購入後に届いたＤＭですが、今まで私が頂いたフォローＤＭの中でも極めて優れたＤＭの一つです。このＤＭは社長からの感謝ＤＭという形式で送られてきていますが文章には、購入への感謝の言葉とともに ・ 昨年の販売実績 ・ リピート率 ・ 既存客の声 が明記され、この商品が良い商品であることを社会的証明を使って説明しています。また、 ・ 商品化の背景 ・ 製造工場長の紹介、写真 ・ スタッフのイラスト で、共感を得られるようなストーリー性も含まれており、見事なフォローＤＭとなっています。 リピートやバックエンド商品へ誘導する段階で使える心理学 テクニック19 ＜フット・イン・ザ・ドア＞ 先にも説明したようにフット・イン・ザ・ドアとは「初めから大きな依頼をするよりも、まず小さな承諾を得て、その後に大きな依頼をした方が、人間はその依頼を承諾しやすい。」という理論です。これは一旦、承諾をした場合には次の承諾への障壁が低くなる、と言うことでもあります。 さらに一般的には「既存客に物を買ってもらうのは、新規客に物を買ってもらうコストの数分の１以下で済む」とも言われています。従って、フロントエンド商品を購入していただいた方には、引き続きフォローを行い、リピートやバックエンド商品への誘導によってＬＴＶを高める努力をすべきです。一旦、商品を販売した後はフォローを全くしない企業が多く存在しますが、これは実にもったいないことです。 初回購入時からどの程度の期間を置いて次の商品への誘導を行なうかは、テストマーケティングを通して調べることになります。具体的には初回購入者が３０人いる場合には、１０人ごとのＡＢＣの３チームに分けて、「Ａチームの１０人には初回購入から１週間後にフォローする。」「Ｂチームの１０人には初回購入から２週間後にフォローする。」「Ｃチームの１０人には初回購入から１ヶ月後にフォローする。」といったようにフォローの期間を分けてテストフォローを行い、どの期間でフォローした顧客がバックエンドの申し込み率が最も高いかを調べ、自社にとって最適のフォロー期間を割り出すことになります。 また、フット・イン・ザ・ドアの理論に関わらず、既存客へのフォローを行なうことの重要性をとても上手に表現した文章があるので紹介します。これは「気絶するほど儲かる絶対法則」（石原明著／サンマーク出版）に書かれていた文章です。「ものを買ってくれたということは、いわば恋愛成立ということですから、あとはその高いテンションを上手に保っていけばいいわけです。それは信頼関係だと思うのです。買ってもらって相手が喜んでくれていたのにこちらが何もしないということは、『好きです』と言って恋愛が成立したらそのあと音沙汰がなくなるのと同じことですから、お客さんは怒ります。『あんた好きだって言ったじゃないの、どういうことよ』という感じですね。向こうは『気に入りました』と言ってくれているのです。ということは、そこは買ってもらって終わりというゴールではなく、顧客化へのスタートだと思わなければいけないわけですね。」（「気絶するほど儲かる絶対法則」石原明著／サンマーク出版／Ｐ９２より抜粋） つまり、ビジネスでは釣った魚にちゃんと餌を与えると、さらに大きなリターンが見込めるということです。だから既存客に定期的に会報誌やお手紙、ＤＭ、メールをお届けするマーケティング活動は結果的にあなたの会社やお店に大きな利益をもたらすということです。 既存客をファン化する段階で使える心理学 テクニック20 ＜集団帰属＞ 人間は集団に所属する欲求があるといわれています。集団に所属することにより、他の構成員から評価、敬意、注目、好意を受けたり、自分一人では得ることの出来ない情報や知識を得たり、一人では達成できない目標の実現に向けて協力したり、安全を確保するためである、と言われています。 そして、一旦ある集団に所属するとその集団の構成員としての価値観、信念、思考、態度、行動が共有化され始めます。そのため集団内では集団内での決まりごとを遵守する「斉一化」や、集団への愛着、連帯感が生まれます。そのため一旦集団に帰属すると自分の立場を表明したことになり、自説を曲げることが難しくなります。 つまり「真面目倶楽部」へ入会し、その会員になると「不真面目なことはできなくなる」ということです。そして真面目であることが集団内では評価されるため、自分の行動規範においても自分の本心とは異なっていても、真面目であることを求めるようになります。 これをビジネスで応用したのが会員組織やネットワークです。具体的には一旦「花の会員」として登録してしまうと、「花を尊重する会に入会した→花は素晴らしい→花の会に入会した私は花が好きである。」という思考が強化されます。そのため「花は心を癒します。大切なお友達のお誕生日にお花のプレゼントはいかがですか？花の素晴らしさをお友達にも分かちあいましょう。全国配送無料で翌日にお届けします。会員特別価格の○○円でご提供します。」なんていうＤＭが送られてくると、「花の会に入会している私は花が好きなはず」と自己認識している私は、花を購入するモチベーションが高められることになります。 会員組織化はマーケティング的にも正しいビジネスモデルです。マーケティングでは前項のフット・イン・ザ・ドアの中でも説明しましたが「既存客に物を買ってもらうのは、新規客に物を買ってもらうコストの数分の１以下で済む」と言われていますので会員組織化は心理学的にもマーケティング的にも利益性を向上させる常套手段と言えます。 あなたの会社やお店の既存客を「○○友の会」「○○倶楽部」「○○オーナー様の会」といった形で会員組織化することは可能なはずです。定期的な会報誌の発送やちょっとした懇親会、親睦活動を行ない、その中で「会員様だけの特別優待価格商品のご案内」や「お友達紹介キャンペーン」等の展開も可能なはずです。 こういった会員組織化活動は単純接触効果、フット・イン・ザ・ドア効果との相乗効果もあり、地盤のしっかりした収入発生源になります。しかも、これら「会員組織に費やす広告宣伝活動」は「新規客を獲得するための広告宣伝活動」と比べると、コストは数十分の一以下で済みますので、収益性が非常に高くなります。 心理学を利用した文章やセールストークへの肉付け ここからはお客様に向けてのチラシやＤＭ、手紙の文章、セールストークの文言にちりばめると効果を発揮する心理学テクニックをご紹介します。多くの心理学のテクニックやその応用、利用例を解説しますので、これらの事柄を理解して、文章やセールストークのスパイスとして利用してください。 （＊各心理学の理論の名称は学術名ではなく、私が個人的に命名しているものも含まれています。） テクニック21 ＜ピーク・テクニック＞ 通りを歩いているときに見知らぬ人に声を掛けられるときがあります。 「アンケートにご協力ください！」 大抵の場合、これで足を止めてアンケートに協力する人はほとんどいませんが、もし掛け声が次のようなものだったらどうでしょう。 「１７秒だけお時間下さいませんか？」 「２３秒ですむアンケートにご協力いただけませんか？」 これでも協力してくれる人はおそらく少ないと思いますが、単に「アンケートにご協力ください！」と呼びかけるよりは相手の興味を惹いたり、「おやっ」と思わせたり、「何故、１７秒なんだろう？」と思う人の割合は増えるはずです。 相手の気持ちの中に「おやっ？」と思わせる言葉や問いかけ、身振り等を利用して相手の関心を引く事を「ピーク・テクニック」といいます。ピークは「好奇心をそそる」という意味です。 「まだ申し込まないで下さい。」「まずい！青汁」などのピーク・テクニックを利用した広告宣伝は読み手や聞き手の興味や関心を引きます。通常の会話では通り過ぎてしまう何気ない会話でも、少しだけ時間や単位、イントネーション、身振り、量を「ズラす」と相手の印象に残ります。待ち合わせでも「じゃあ１時に駅前で！」というより「じゃあ１２時５７分には駅前で！」と言ったほうが相手の印象には残ります。 広告では「３０分で理解できる！」「徒歩２０分」「わずか２，０００円」「２９歳まで」などとＰＲしたり、さらに特徴的に「たった２８分で理解できる！」「歩いてほんの１８分７秒ジャスト」「なんと１，９８０円だけ」「２９歳と３ヶ月までＯＫ」といった表現で、相手に「おやっ！？」という気持ちを起こさせましょう。 まずは立ち止まらせて、関心をもたせます。説明と説得は関心を持たせてから行ないます。 テクニック22 ＜モノより思い出（機能よりイメージ）＞ 商品説明は機能の説明ではなく、その商品を手に入れたらどのようにお客の得になるのか、どのようにお客の生活が豊かになるのか、どのような生活が享受できるのか、を伝えます。 自動車のショールームで次の様に説明されたらどんな感じがするでしょう。 「いらっしゃいませ。こちらの車いいでしょう。車の全長は3,845mmで、中は広々設計、エンジンは水冷直列4気筒横置SOHCで総排気量は1,339cc。もちろん低燃費で経済効率も抜群！スマートカードキーやドアミラーウインカー、エアクリーンフィルターなどの充実した装備と、専用ボディカラーの特別仕様車となっています。最小回転半径 は小回りが効く4.7m、先進スタイルで幅広い年齢層のお客様に好評なんですよ。」 ・・・今時あまりいないと思いますが、これだと機能説明ですよね。 一方、 「こんにちは。奥様がお使いになられるのですか？セカンドカーですか。お買い物とかお子様の送り迎えにはこれくらいの大きさの車がちょうどいいですよね。狭い路地でも運転が楽だし。でも、見た目より中はゆったりしていて広いんですよ。よかったら乗ってみて下さい。 ・・・ねっ、結構手足も伸ばせるでしょ。同じクラスの車ではこの車が一番室内空間が広いんです。お子様がいらっしゃるご家庭の２台目の車として開発しました。塾や学校の帰りにご近所のお子さんとかを一緒に乗せてもゆったりしていますし、このシートも３秒で倒せるのでちょっと大き目のお買い物をしても大丈夫です。 それから車特有のにおいもあまりしないでしょ。この車にはエアクリーンフィルターも標準で装備されているんです。アトピーや花粉で悩んでいる方にも好評なんですよ。目がしょぼしょぼしながら運転って危ないですものね。 もしよかったらハンドル回してみて下さい。ねっ、手にしっくりくるでしょ。このハンドルは女性の手のひらに合わせてあるんです。この車最小回転半径 は4.7mなんですけど、日本のスーパーの駐車場って狭いじゃないですか、これだとハンドル操作が楽で小回りが効いて駐車場に入れるのが楽だって皆さんおっしゃるんですよ。前も見やすくないですか？ 他社の車に比べてフロントガラスは１０％視界が広いんです。学校とかスーパーって小さなお子さんが多いし、ちゃんと視界は広く取らないと危ないですよね。実はこの車はウチの系列では３０代の奥さんの購入率第１位なんです。 スマートカードキーだし、概観もスタイリッシュで洗練されているからだと思いますが、人気あるんですよ。 もちろん燃費もいいので、ご家族でドライブに行かれてもガソリン代の節約もできるんです。」 ・・・このような説明なら機能の説明ではなく、その商品を手に入れたお客の生活をイメージさせていることになります。 そして説明には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感に訴えるような手法、表現方法を考えます。 「これからの季節は真っ赤な夕日の沈む海辺へドライブするのも素敵ですね。」「山の木々が赤、黄、茶色に色づいていて紅葉がキレイでしょうね。」「ＢＧＭはどんな曲がお好きですか。」「エンジン音が響くでしょ。」「手にしっくりくるでしょ。」「このシートの手触りを確かめてみてください。」「人気のフランス料理店に乗り付けて、シックなＢＧＭが流れる店内で、年代モノのワインを彼女と楽しみたいですね。」「皮の香りが落ち着きますね。」等・・・。 ＮＬＰ理論（Neuro-Linguistic-Programming）によると人間は視覚優先型、聴覚優先型、触覚優先型の３つのタイプに分かれると言われています。このタイプを意識して広告表現を考えると反応率に差が出ます。 例えば「目からうろこが落ちます。」は視覚優先型、「評判がいいです。」は聴覚優先型、「ずしりとした重みがあります。」は触覚優先型の表現です。これらの表現方法を意図的に使用することにより、お客からの反応率は上がります。 「モノより思い出（機能よりイメージ）」を重視する説明方法は今では当たり前ですが、それでも自分がビジネスをする段階になると「機能」を目一杯説明している人がいます。ホームページを見ても「機能説明型のホームページ」が今でも多く見受けられますので注意してください。その商品やサービスがもたらす相手のメリットや生活の変化をイメージさせるようにし、五感に訴えることが重要です。 テクニック23 ＜権威効果＞ 人間は一般的に「特定の分野や対象においての第一人者や専門家、 権威者の言う事を信じやすい。」という性質をもっています。 例えば、チラシやカタログ等で商品の説明に「この商品は○○大学の△△教授によりその効能が証明されています。」「○○新聞で取り上げられた商品です。」「□□ＴＶで紹介されたサービスです。」などと書かれていることがあります。 いずれも特定の分野においての専門家、権威者の言う事、マスコミでの掲載実績を元に商品やサービスに対しての信頼感や安心感、高級感を見込み客に与えるために使われています。あなたの商品やサービスに付加できる権威事項があればそれは見込み客に知らせるべきです。 テクニック24 ＜フレーミング＞ フレーミングとは自分に都合の良いように条件や前提を作り、相手の思考の枠組みを自分にとって有利な方向へ誘導するテクニックです。ビジネスでは商品の価格について説明する時に「この商品の価格は２万３千円です。」と説明する場合と、「相場だと大体5万円はしますよね。でもこの商品は半値以下の２万３千円なんです。」といった説明をすることがあります。この場合、商品が日用品でない場合には、前者の説明では「２万３千円」が相場価格から見て高いのか安いのか分かりません。ところが後者の説明では「２万３千円は相場より安い」という判断が可能になります。 （但し、「その商品の相場が本当に5万円なのか？」は不明です。でも、相場価格を確認するために商品を購入するたびに毎回毎回厳密な市場調査を行なおうとする人はいません。） 自ら、自分に有利な方向へ誘導するための前提や条件や枠組みを作ること、これがフレーミングです。「ご近所の方も大勢加入されています。」「大体皆さんはこのコースをお申込みになります。」「松竹梅の竹を選ばれる方が最も多いです。」「若者の間ではもの凄く人気があるんです。」「社会人としてはこの程度は常識です。」「アメリカでは６０代以上の方に圧倒的に支持されています。」これらはどれも正確なデータに基づいている場合もありますが、単にフレーミングである場合もあります。 あなたがビジネスでこのテクニックを利用する場合には出来るだけ統計データ、客観的事実、検証値、常識通念に基づきフレーミングを行なって下さい。 テクニック25 ＜過去完了型＞ 次のコピーからどんな印象を受けますか。 「去年までは私も負け組みでした・・・・。」 「実は私もダイエットではかなり苦労しました。」 「最初はうさんくさいと思っていました。」 これらは 「去年までは私も負け組みでした・・・・。」 → 「でも、今は勝ち組みです。」 「実は私もダイエットでは散々失敗しました。」 → 「でも、今は成功しています。」 「最初はうさんくさいと思っていました。」 → 「でも、今は違います。」 こちらは直接明言していないのに、相手の頭の中に「でも、今は勝ち組みです。」「でも、今は成功しています。」「でも、今は違います。」といった肯定的なイメージが浮かびますよね。 このように相手に勝手にイメージを膨らませてもらうと、こちらが説得するのではなく、自らが想像したことになりますから、相手の深層意識には「自分で納得した」イメージが刷り込まれます。 明言するのではなく、過去完了型で相手にイメージを膨らませるコピーは効果があります。 テクニック26 ＜中学生にわかる言葉＞ 「悪魔の対話術」（内藤誼人著／ダイヤモンド社）には次のような記述があります。 「イギリスの物理学者ラザフォードは『いかなる問題も、バーの女性に説明できるようでなければならない』と述べ、シンプルな話ほど、人に喜ばれることを見抜いた。・・・・（中略）・・・トルーマン元大統領の秘書官にゲール・サリバンという人物がいた。彼は、ともすると難しくなりがちな政策論や政治的トピックを、だれにでも理解できるような言葉で表現するのが、大変にうまかったという。たとえば、サリバンは、『ソ連の非妥協的態度』という言葉が、大統領の演説用の原稿の中にあると、すぐさま『ソ連は意地っ張りだ』と書き直したと言う。」 つまり簡単で平易な言葉で説明することが大切である、ということです。日本では中学まで義務教育です。中学までは全ての人が同じことを学びますが、その後の進学先、専攻分野、就職先等の進路によって徐々に「コミュニケーション言語」に差が出てきます。そのため自分では普通に話しているつもりでも、相手には本意が伝わらなかったり、理解してもらえない場合が出てきます。そのため説得する際には中学生にも分かるような解説を心がけるようにします。 あなたには当然の知識や言葉であったとしても、あなたのターゲットとなる見込み客の全てがあなたと同じ知識と教養をもっているわけではありません。そのため広告宣伝、販促活動、説得場面においては常に「中学生に分かるような解説」を心がけて下さい。 テクニック27 ＜理由＞ 「１０万円の商品が今日は特別に３万円です。」と言われると、買い手には「不良品じゃないのか？」「何か怪しいなあ。」という心理が生まれます。しかし、自分が売る側に立った時には「安いよ！安いよ！お買い得だよー。」と連呼している人がいます。これでは買い手の心をつかむことはできません。人間には「何故そうなのかを説明する理由」が必要なのです。 「本来１０万円の商品ですが、ワン・シーズン型落ちの商品です。決算前なので格安で販売します。」「来月店舗改装なので赤字覚悟で処分します。現品お持ち帰りという条件で今日は３万円で売ります。３台限りです。」と理由をつけると納得する人が出てくるのです。もし、あなたの商品やサービスが安いのなら、何故安いのかの理由を説明することが必要です。 左の写真はデパートの化粧品コーナーのＰＯＰです。「ご褒美コスメ」というコピーが買いてあります。これは「化粧品を買う理由」なのです。「一生懸命働いているんだから自分にこれくらいのご褒美を買ってもいいんですよ。」という理由です。人間は理由があると買いやすいわけです。これは大義名分と言っても良いですね。 テクニック28 ＜ロミオとジュリエット効果＞ 恋愛中に両親や周囲の反対といった妨害にあうと、その恋は情熱的なものになるという理論があります。これをロミオとジュリエット効果といいます。２人の心の中には周囲の妨害によって興奮や気分の高まりが引き起こされますが、これを恋人相手の魅力による興奮や気分の高まりと勘違いして、さらに二人の結びつきが強くなるからだと言われています。 これがビジネスで応用されていることがあります。２人一組でセールスを行い、１人が熱心に説明するのですが、もう１人の方が「無理、無理！この人は買う気もやる気もないよ。」と言われるとなんだか無性に頭にきて「じゃあ、買ってやるよ！」となる場合があります。これは意図的に妨害を入れているわけですが、その妨害によって自分の心が逆に動くのです。 インターネットビジネスではこの妨害をどうやって具現化すればよいでしょうか？ 例えば「おそらくあなたがこの講座を受講することを知ったときには周囲の人のほとんどは反対するでしょう。でも、彼らには人生にとっての本当に大切なモノが分っていないのです。口先ばかりで行動しない批評家は常に革新的なことには反対するのです。」といった形で、まだ現れていない「周囲からの妨害」をあなたが作り出すことによって、ロミオとジュリエット効果を引き出すことになるかもしれません。 テクニック29 ＜禁止法＞ 私は自分で運営している投資関連のホームページやメルマガ広告で「真剣な方以外は申し込まないで下さい。」「真面目な方以外の閲覧はお断りします。」といったように意識的な禁止を行なう場合があります。この禁止法を利用する理由は２つあります。 一つは「人間には断られたり禁止されると、逆にその対象に対して興味が湧く」という理由からです。旅館の予約をしようと電話したところ「あいにく満室となっております。予約出来ません。」と言われると、何故かその旅館が良く思えてきて、無性に悔しくなります。見てはいけませんと言われると見たくなり、行ってはいけませんと言われると行きたくなる心理と同じです。拒絶や禁止をすることによりかえって申し込みが増えることがある、のです。 二つ目は「どなたでもご自由にどうぞ！みなさんどうぞいらっしゃいませー！」とこちらが言うと、いろんな種類の人間が誰でもやってきます。あらゆる種類や層、年代の人がお店にやってきます。当たり前ですよね。これはマーケティング的にはターゲット層が明確になっていないとも言えます。中小零細企業ではこういった八方美人的なターゲット戦略を取ると、自分のコアな客層以外の対応に追われて、結果としてコアな客層に対する接客やサービス、説得に費やす時間と労力と資金が効果的に使えなくなります。そのため意識的に禁止を使い、見込み客をふるいにかけていることになります。 自分のお店が魚屋なのに「みなさんどうぞいらっしゃいませ。」と言った場合には、野菜や果物を買いたい客もやってきます。彼らの相手をしていたら本当に魚を買いたいと思っている客の相手をする時間が少なくなるのです。店の看板に「○○魚店」と書いてあるのは「ウチは魚屋です。魚を買いたいと思っている人いらっしゃい！野菜や果物を買いたい人は来ないで下さいね。」という意味も含まれています。 つまり店の前でターゲットにならない客を断っていることにもなります。だから本当の見込み客に専心できるのです。 オンラインのビジネスでも自社のターゲットが明確になっているのなら、そのターゲット像に一致しない客層は最初から「○○の人はお断りします。」と明示すると結果的に効率性が高まります。 禁止法はターゲット戦略を明確にしてビジネスを成功させた経験のある人でないと、怖くて使えない手法だと思われるかもしれません。でもターゲットが明確になっているのなら禁止法を一度試してみてください。見込み客に費やす時間と労力と資金が有効に使え、ビジネスの効果性は高まります。 テクニック30 ＜社会的証明＞ 人間は「自分で正しいと思う事を正しいと思う」より「多くの他者が正しいと思う事を正しいと思う」傾向があります。新聞、雑誌等で商品ランキングが掲載されていることがありますが、人はこういったランキングを見て、その商品の大まかな判断をします。つまり、品質とは無関係に「多くの人が買っている商品は良い商品である。」という意識が働きます。これを社会的証明と言います。 そして特に「自分と似ている多くの他者が正しいと思う事を正しいと思う」傾向があります。つまり自分と同じ年代、同じ性別、同じ趣味嗜好をもった多くの人の考えに自分の考えが影響を受けることになります。 この心理をマーケティング利用しているのが「喜びの声」や「ランキング広告」です。自分と同じようにダイエットや肌荒れに悩む多くの人の「喜びの声」が掲載されているチラシやＤＭは読み手に社会的証明の影響を与えます。 飲食店などでも「今週の人気メニュー」とか「当店の人気料理」と書いてあると、このコピーに影響を受ける人が出てきます。その料理に対する実際のオーダーも増えるので、さらにそのメニューは人気化することになります。 テクニック31 ＜泥棒洞窟実験＞ 「泥棒洞窟実験」の詳細については社会心理学の本を参照していただきたいのですが、ここでは「泥棒洞窟実験」という心理学の実験結果より導かれている「集団と集団間の葛藤を解消する方法」について簡単に説明します。 一般的にある集団に属したメンバーにはその集団に対しての忠誠心や、仲間意識が芽生えてきます。そしてこの集団と別の集団が存在する場合には、それぞれの集団で相手集団に対して葛藤（競争、敵対心）が生じる場合があります。そのため相手を出し抜いたり、相手の集団をののしったり、軽蔑したり、相手の意見を軽視することがあります。 実験からこういった集団間の葛藤を解消するための有効な方法は「上位目標を与え、それを協力して達成させるようにしむけること」であることが分かりました。例えば、お互いに敵対している国内の集団に対して、「今は国内で争っている場合ではない。力を合わせて海外からの侵攻に立ち向かい日本を守ろう。」というような一段大きな、一段高い共通の目標が出来ると、それぞれの集団間の葛藤が解消される、ということです。 私の個人的な見解ですが、売り手と買い手というのは本来別々の集団です。買い手は通常日常生活を営む中での家庭や会社、地域、仲間といった集団に所属しています。そのため「売り手」という集団の論理や考えに反発したり、売り手の説明を聞かなくなる場合があります。このような場合にこの「上位目標を与え、それを協力して達成させるようにしむけること」という概念はビジネスでも応用できるのではないかと思うのです。 例えば、観葉植物を販売するビジネスの場合を考えて見ましょう。ここでの売り手の目標は「販売」であり、買い手の目標は「生活への潤い」であったり「ストレスの緩和」であったります。それぞれの目的は別なのでそれぞれの論理を展開しても相手にはなかなか伝わらず、結局は価格や地理的距離によってビジネスの売り上げは影響を受けてしまいます。つまり「安い店」や「近い店」という要因が売上げに影響を与えるということです。 このような場合に価格や地理的距離を超越してビジネスを展開するには 「地球環境の破壊は想像以上で進行しています。各国の政府や企業にはそれぞれの思惑や計算、しがらみがありその対応は遅々として進みません。地球温暖化防止や二酸化炭素削減といった地球の問題に対して私達個人が出来ることからまずは始めませんか。当店では売上げの５％を○○に寄付し、地球環境の保護を真剣に考えています。」といった「販売」「生活への潤い」「ストレスの緩和」といった目標よりも上位の目標として「地球」レベルの共通目標を設定することにより、お互いに協力する依存関係が成立します。 この場合には別々の集団であった売り手と買い手が共同体のような意識を共有しますので、「安い店」や「近い店」という要因が売上げに影響する比率は下がり、目標やポリシーが売上げへの影響を持ち始めます。 もちろん、これらのポリシーには売り手の確固たる信念や人生哲学が反映されていなくてはいけませんが、集団間に上位目標を設定することにより、売り手、買い手の間に葛藤が起こることなく、双方がお互いの目標を達成しつつ、相互協力体制を築くことも可能になるかもしれません。 テクニック32 ＜共通の敵＞ 他民族国家であるアメリカでは国家意識を高めるために国民共通の敵を作り、愛国心を高めるという話があります。それは例えば社会主義であったり、イラクであったりします。同様に新興宗教では信者の忠誠心を高めるために「信者共通の敵」を作ります。それは例えば国家権力であったり、見えない悪魔であったりします。労働組合では組合員の結束を強めるために「組合員共通の敵」を作ります。それは例えば資本家です。このように共通の敵の存在が内部の結束を固め、団体の構成員同士の連帯感を生むことは良く知られています。 例えば自転車を売る場合でも「車社会」や「環境汚染」といった共通の敵を設定すると、ビジネス切り口は変わってきます。例えば「私達は地球に有害物質を撒き散らし、身体に悪影響を与え続ける車社会に生きています。１週間に１日でもいいから車を降りて、地球と身体に優しい自転車に乗ってみませんか。」という説明だと、売り手と買い手が同じサイドに立って、共通の敵である地球環境汚染と一緒に戦いましょう、ことになります。これだと売りの匂いが薄められて、買い手には大義名分が立ち、購入動機が発生しやすくなります。 同様に「経営者の皆さんが休まずに働いてやっと生み出した利益。そこから法人税、住民税、事業税、固定資産税、予定納税、源泉徴収・・・利益の大半が国や自治体にもって行かれます。そのため節税を考えている方も多いでしょう。でも経営者の皆さんが貴重な時間を割いてこれらの税法上の問題を全てを理解し、効果的な節税対策を施すことは可能なのでしょうか。私は税の専門家ですが、国や自治体は税法をわざと分かりにくくしているとしか思えません。また、使える権利を使用しなかったとしても国や自治体はそれを親切に指導してはくれません。私は行政サイドではなく、経営者の立場に立った合法的な節税対策を提案します。」という説明だと単なる税理士や会計士ではなく、経営者とともに国家や税法と戦う同じチームの一員としてのポジションを取るビジネスになります。 つまりビジネスでも「共通の敵」を創ることにより、売り手と買い手が一体となることができるのです。 テクニック33 ＜ハロー効果＞ ハロー効果とはある人を評価するとき、その人に優れた学歴・社会的に高い地位・立派な肩書き・身体的な魅力・良い家柄などの特徴があると、その人の能力や人柄などを実際以上に高く評価し、逆に悪い特徴があると、実際より悪く評価する心理学的な現象です。 例えば地位が高いというだけで、「この人なら信頼が置けそうだ」と判断されたり、美人だというだけで「この人は悪い人ではない」と判断されたりするのです。つまり、ある一つの目立った特徴が他の部分にも影響を与えるのです。 従って、あなたに目立った特長となる学歴・地位・肩書き・身体的魅力・家柄などがある場合には、それを上手に利用すべきです。それはビジネスで他者より優位に立つための強力な武器になります。あなたの会社やお店に、もし目立った特長があればどんな小さなことであってもそれは大いに利用すべきです。 テクニック34 ＜視覚＞ 私はホームページに必ず顔写真を載せます。それは「人の心に影響を与えるのは視覚的要素５５％、聴覚的要素３８％、論理的要素７％」と言われているからです。従って私が話し上手であればセミナーやＶＴＲでビジネスを行なうのが最も効果的なのですが、私は話しベタなので本書のように文章で自分の考えを表現することが多くなります。 しかし、効果的なビジネスを展開するためには文章だけでなく相手に対して視覚からもアピールする必要があります。そのため顔写真は掲出しています。ホームページ上に自分の顔写真を掲載することに抵抗のある方も多いですよね。でも、本当の話ですが私宛に「ホームページの写真を見て信頼出来そうな人だと思ったので申し込みをします。」というメールが何通も来ています。 写真で人を判断できるかどうかは疑問ですが、実際にこのようなメールが少なからず送られてくるというのは事実です。このことは「人の心に影響を与えるのは視覚的要素が大である。」ということを証明していると思います。 ビジネスでも見た目は大切なのです。 また、同様の理由でホームページや小冊子に文意に沿った図解やイラスト、フローチャートを入れて、視覚的に理解しやすい資料の作成や誘導を心がけることも大切であると言えます。 テクニック35 ＜連合の原理＞ 人間はあるものと別のものを、無意識のうちに結びつけてしまう傾向があります。例えばモーターショーでは新型自動車の横には必ず美人コンパニオンが笑顔で立っています。健康ドリンクのＣＭではドリンクを握り締めたマッチョマンが上腕二頭筋を膨らましています。 しかし実際には自動車という商品と美人コンパニオンの間には何の関連性もありあません。彼女が開発したわけでもないし、彼女が付いてくるわけでもありません。彼女を自動車は全く別物なのです。また、健康ドリンクのマッチョマンはそのドリンクを飲んだおかげでマッチョマンになったわけでもなく、そのドリンクを飲んで力こぶができたわけでもありません。もちろん彼が商品開発担当者でもありません。でも、人間はこういった別々のものを無意識に結びつけてしまうのです。 心理学的の実験では、男性を対象に「自動車だけが写っている広告」と「魅力的な女性モデルと自動車が写っている広告」を見せた場合、後者の広告を見た男性のほうが、その自動車を高く評価することが確認されています。 当然、ひ弱な身体の男性が健康ドリンクを持っている広告とマッチョマンが持っている広告では受け取るイメージは大きく異なるはずです。このような人間の性質を連合の原理と言います。 あなたがこの原理をビジネスで応用する際のポイントは「自分が人からこう見てほしいと思っている自分のイメージと結びつくモノを意図的に使用する。」ということです。つまりあなたが人から優しく親切な人だと思われることがビジネス上のメリットを生むのであれば、あなたは「優しさ」や「親切」を人に連想させるような写真、キャラクター、色、モノを利用するということです。 例えばチラシやＤＭに自社の社員やスタッフの写真を掲載する時でも、次のようなシチュエーションで写真を撮影するとあなたに対するイメージはずいぶんと異なるはずです。 ・ペットのチワワと一緒に写っている写真 ・黒いドーベルマンと一緒に写っている写真 ・家族と一緒の写真 ・沢山の経済書が並ぶ本棚の前で撮った写真 ・ パソコンルームで撮った写真 それぞれ見た人はあなたに対してどんなイメージを持つでしょうか？こんなちょっとしたことでも人間は「それ」とあなたを結びつけて無意識に記憶するのです。 テクニック36 ＜刑務所実験＞ 模擬刑務所をつくり、そこで被験者にランダムに看守と囚人の役割を与えて、彼らの行動、心理を実験した心理学の実験があります。（Ｐ・Ｇ・ジンバルドー）この実験では、囚人の役割を与えられた側には感情の落ち込み、号泣、激怒、不安といった心理状態が現れ、看守は攻撃的、権威的になっていったということが確認されています。つまり人間は自分の役割にハマってしまうのです。社長と社員、先生と生徒、医者と患者、夫と妻、親と子供など、私達は無意識のうちに与えられた（または自分で掴んだ）役割を演じるのです。 これをビジネスに応用するならあなたは「あなたが望むあなたとお客の関係」はどういうものであるかを、あなた自身が明確に理解をしておく必要があります。つまり「あなたのポジショニング」を明確にし、そのポジショニングを意図的に創り上げなくてはいけない、ということです。 例えばあなたは健康器具の販売を行なっており、あなたは自分とお客との関係を「先生と患者」のポジションとして確立したいと思っているのなら、広告表現においても販促活動においてもあなたは自ら先生と名乗り、周りの人間にも先生と呼ばれるようにし、先生としての知識と経験を持って、先生としての立ち居振る舞いを行なわなくてはいけません。 ポジションの取り方には２つの方法があります。１つは「時間をかけて自然発生的にそのポジションに自分が納まるのを待つ場合」です。２つ目は「最初から意図してそのポジションに納まる場合」です。どちらを選ぶかはあなた次第ですが、昨日まで平社員であっても、起業して社長になった場合には「今日から社長」なのです。自然発生的に社長になったのではなく、意図的に社長というポジションになるのです。あなたの商品のポジショニングが明確ならば「最初からあたかもそのようにポジションをとる」ことが必要です。但し、当然そのポジションにふさわしい態度、知識、技術を有し、そのポジションを継続するための努力を続けないと効果は長くは続きません。 テクニック37 ＜コミットメント＞ 無料のお試し品や提供品、低価格での試供品、無料での相談、指導等の申し込みに際して「このサンプルは本当にご興味のある方にしか差し上げていません。あなたは本当にこの商品にご興味があるのですね。」「数に限りがあるので本当に必要な人にだけに差し上げています。」「応対できる人数には限りがございますので、真剣にご検討いただける方だけに限らせていただいております。あなたは真剣なのですね。」といったような対応をされる場合があります。この場合、「はい」と答えた見込み客は一貫性の原理でも説明しましたが、自分は「本当に興味がある。」「本当に必要としている。」「真剣に購入を検討している。」という自分の立場を表明したことになります。 ある立場や物事や考えに対する深い係わり合い、強い意欲、強い真剣さ、本気、やる気を持ち、対象に対して強い思いを抱くことをコミットメントと言います。上記のような見込み客に対する質問は資料請求者や試供品請求者の中から、単なる「もらい屋さん」と、購入意欲の高い見込み客を選別するフィルターの機能を果たすとともに、見込み客に商品の検討を真剣に考えていることにコミットメントさせることにも役立っています。 このようなフィルターをかけることは「見込み客の数を制限することになる」ので売上げが下がると思われがちです。しかし、ターゲット設定が明確であればフィルターは購入に至らない見込み客やもらい屋さんを消去し、結果的には見えるコスト、見えないコスト（労力、時間、手間）を省き収益性の向上をもたらします。 フィルターをかけずに幅広い層全てにアプローチする戦略が有効なのは資金と人材が豊富に利用できるごく限られた企業だけです。スモールビジネスにおいてはフィルターをかけた方が収益性は高くなります。 テクニック38 ＜ここだけ、あなただけの原理＞ 「この話はめったに人に教えないのですが・・・」「ここだけの話ですが・・・」「あなただけには・・・」こう言われると妙に嬉しさと興味が湧き、その話に真実味があるように思ってしまいます。希少性の原理と同じように「めったに無い話、ここだけの話」＝「希少な情報には価値がある」と人間は考える傾向があります。また、「あなただけには」＝「自分だけ特別扱い」と考え、自尊心がくすぐられます。しかも貴重な情報を教えてもらったと言うことに対して別項で説明した返報性の原理も働きます。 インターネットビジネスでもこれは使われています。 「無料お試しセットをお申込みいただいたあなただけにコッソリと教えちゃいます。実は・・・」「ここまでご覧頂いたあなたにはお話しますが、実は・・・」「あの有名な＊＊＊さんから聞いた話です。これはまだあまり知られていないことなのですが、・・・」 どれも「ここだけ、あなただけの原理」が働いています。 テクニック39 ＜悩みからの解放＞ フィア・アピールは心理学的に有名な原理ですが、私はフィア・アピールの応用編として「悩みからの解放」をアピールするマーケティング・セールス・広告テクニックも存在すると思っています。 これは左図のように悩みや痛みからの解放を誘導の切り口にするものです。 具体的には腰痛、関節痛からの解放、薄毛の悩みからの解放、勉強嫌いな子供に悩むお母さんの解放、苦手な家事からの解放といったものがあります。フィア・アピールはやや強引で相手の弱みに付け込むようなイメージが発生する場合がありますが、「悩みからの解放」は「私はあなたを今の悩みから救ってあげたいのです。」という正義の味方的なポジションを取ることが出来ますので、感謝されつつビジネスの展開ができる可能性があります。 テクニック40 ＜親和要求＞ 孤独を嫌い、他者と友好的な対人関係を求める要求、つまり他人と一緒に仲良く社会生活や仕事に関わりを持ちたいという人間の欲求を親和要求と言います。この親和欲求は不安や恐怖がある状況下においては、その要求がさらに高まることが確認されています。しかも不安や恐怖がある状況下では偶然に居合わせた見知らぬ人に対してさえも親和要求は高まると言われています。 例えは悪いかもしれませんが、犯罪の多発する地域で不安な日々を送っている家を訪問し、セキュリティシステムを薦めるセールスマンや、大きな自然災害のニュースが流れている時期に損害保険の勧誘にまわるセールスマンに対しては、通常時よりも信頼や好意度は増しているのかもしれません。 良い悪いは別にして、犯罪や災害、薬害、公害、食生活の安全性、環境問題といったトピックスがＴＶや新聞で大きく報道され、社会的な問題になっている時期には、インターネットビジネスでもオフラインのビジネスでもセールスやアプローチの絶好のタイミングとなることがあると言えます。 テクニック41 ＜自己開示＞ 他人に自分自身に関する個人的な話や自分の内面的な話をすることを自己開示といいます。この自己開示はお互いの親密度を増す効果があることが分かっています。相手の生い立ちや経歴、個人的な悩みなどを聞くと、益々相手と仲良くなることは経験的に理解できると思います。 新聞広告やチラシ、ＤＭでもビジネスの話とは別に、社長やオーナーあるいは担当者個人の生い立ちや失敗談、苦労話などが書かれている場合があります。本人が意図しているかどうかは不明ですが、これは自己開示です。一般的には、これにより読み手には相手に対して好感度が上がり、親しみを感じるようになっているはずです。（もちろん不快な内容の自己開示は逆効果ですが。） これは当然インターネットビジネスでも有効です。何度かのメールのやり取りの後に、自己開示的なメールの配信を行なうと相手は個人的なつながりを感じるとともに、自分を信頼してくれていると受け取り、相手が自己開示してくれたのだから自分もお返しをしなくてはいけない、といった心理状態になります。 また、ホームページのプロフィール欄に自身の生い立ちや失敗談、苦労話などをストーリー化すると見込み客からみたあなたの好感度は上がる可能性があります。 テクニック42 ＜傍観者効果＞ 心理学の本には必ずと言っていいほど解説がなされている事件があります。それは１９６４年にニューヨークで起きた殺人事件です。仕事から帰宅途中のＣ・ジェノビーズという女性が暴漢に襲われ殺害されたこの事件では、被害者が３５分間もの間叫び声やうめき声を上げる中、３８人の人がそれを見ていたり叫び声を聞いていたにも関わらず、誰も被害者を助けず、警察への通報も行なわなかったのです。 この事件は「都会人の冷たさ、無関心さを表す事件」としてマスコミで報道されましたが、その後の研究の結果、これは「都会人の冷たさ、無関心さを表す」のではなく、「傍観者効果」という人間の心理を表す事件であることが明らかになってきました。 「傍観者効果」とは他者の存在が援助行動を抑制する効果のことです。援助を求める人が居ても、周りに自分以外の人がいると、「誰かが助けるだろう。」「皆はどうするだろう？」「自分が動けば皆の前で正しい処置、行動をとらなければならなくなる。恥ずかしい。勇気がいる。」「既に誰かが通報したかもしれない。」といった心理状態が生まれ、結局は誰もが援助をしづらくなる状態です。つまり人が周りに大勢存在するからといって必ずしもその状態は援助行動を助長する原因にはならないということです。 そのため、もし自分が大勢の前で病気や怪我等で危険な状態にある場合には、不特定多数の人に援助を求めるよりも、特定の人に向かって「そこに立っている眼鏡をかけた青いシャツのあなた、すぐに救急車を呼んでください。」と特定の人物に特定の行動をするように求める指示することが大切だと言われています。 この理論に従うと寄付や援助、善意を求める場合には「皆さまからの援助をお待ちしています。」というより「現在、＊＊＊は危機的な状況です。今この説明を聞いている、責任感が強く、慈悲の心に溢れる『あなた』からのサポートをお待ちしています。『あなた』の一歩が＊＊＊を変えるのです。」というように、相手を特定した、想定した説明の方が効果的ということになります。 テクニック43 ＜パーソナリゼーション＞ 人間が最も耳に馴染みの良い言葉は自分の名前だと言われています。お店でも何度か通った後に「○○さん、いらっしゃい。」と名前を覚えてもらえると嬉しくなります。「皆さん！お願いします。」ではなく「佐藤さん、お願いします。」「田中さん、こんにちは。」というように相手を全体の一部として扱うのではなく、一人の個人として扱うこと、また個々の相手毎に適した内容のコミュニケーションを行なうことをパーソナリゼーションと言います。 メールでも「こんにちは。先日は当ショップでのお買い物ありがとうございました。」ではなく、「山田さん、こんにちは。先日は当ショップでワイングラスをご購入頂きありがとうございました。」とパーソナライズされたメールが送られてくる場合が増えています。 これは定型文章と顧客のデータベースを利用し、メーラーやステップメールでの差し込み機能を利用すると実現可能なパーソナリゼーションです。このパーソナリゼーションを利用することにより、相手に好印象を与えることが出来ます。 パーソナリゼーション機能を知っている人なら「このメールは差込機能を使ってパーソナライズしているぞ。」と分かり、大した感動もありませんが、メールを受け取る人全てがこういった機能や理論を知っているわけではありません。 最近ではメールの差し込み機能の設定も簡単になってきていますので、利用できる環境にある場合には是非、利用しましょう。 テクニック44 ＜ドア・イン・ザ・フェイス＞ ドア・イン・ザ・フェイスとは最初（１回目）に大きな要望を行い、相手にそれを断らせます。その後、１回目より小さな要望を行い、それを相手に承諾させるテクニックです。この場合、２回目の要望が本当に相手に承諾させたかった要望になります。 これは説得する相手が「１回目の要望を断ってしまったことにより負い目を感じる。」「比較の原理で相対的に２回目の要望の方が受け入れやすくなる。」「１回目の要望を断っているので自分が交渉の主導権を握って相手に譲歩させたように感じている。」ために２回目の要望を受け入れやすくなる、と言われています。 ビジネスにおける見積もり交渉でも最初に大きな金額を提示し、そこから値引きをしていくことがあります。また、プレゼンテーションで最初に大きな予算を必要とする企画を説明した後に、適度な予算の企画を提案し、後者が本命企画である場合があります。 テクニック45 ＜ロー・ボール・テクニック＞ 最初に相手にとって良い条件を提示し、相手の許諾を手に入れた後に少しずつ条件を割り引いていくテクニックです。具体的にはお値打ち価格で提示してある車の商談を例に考えて見ましょう。お客が購入の意思を表示した後に、販売員が次のように言います。「すいません。私うっかりしていました。実はナビゲーションシステムはオプションとなっており別料金でした。」とか「この他に保険料と重量税と下取りしたお車の廃車費用が別途＊＊＊円必要です。」といったように、相手の許諾を受けた後に、買い手にとっての良い条件をどんどん割り引いていく手法です。 これも、説得される側は「購入する」という自分の意思表示を行なったために一貫性の原理が働き、承諾への関与度が高まっているうえに義務感も生じます。さらに承諾を撤回する恥ずかしさも生じるために、自分にとっての良い条件をどんどん割り引いていかれても最初の承諾を取り消しにくくなってくるのです。 テクニック46 ＜ザッツ・ノット・オール・テクニック＞ ＴＶ通販で「このデジタルカメラが＊＊＊円。」と説明した後に「さらにこれにプリンターも付けちゃいます。」「また今回だけ特別に送料は当社で負担します。」「さらにさらになんと今回は金利手数料が無料！」「さらに・・・」とオマケがどんどん追加されることがあります。このようにオマケや特典、サービスを後から次々に付属させて商品価値を高めるテクニックがザッツ・ノット・オール・テクニックです。買い手はどんどんとオマケが付き得をした感じを抱きます。 このオマケについては「プリンターが付いて、送料、金利手数料無料・・・が付いたお得なデジタルカメラが＊＊＊円です。」と最初にお得を提示するよりも、最初はメイン商品を説明し、その後にオマケをどんどん追加してゆく方が効果が高いと言われています。 テクニック47 ＜相対的略奪感＞ 人間は自分が本来手にすべきものを手に入れずに、自分と類似している他者がそれらを手に入れていたことが分かった場合には不満が生じ、その不満が攻撃につながるほどの強いエネルギーとなることがあります。 これを利己的な相対的略奪感といいます。 「社会心理学キーワード」（山岸俊男著／有斐閣）には利己的な想定的略奪感が生じるには「①個人がある事物Ａを望んでいる。②他者がＡを手に入れているのを知る。③自分にもＡを手に入れる資格があると感じる。④Ａを手に入れることは不可能ではないと考える。⑤自分がそれを手に入れていないのは自分が悪いからだと思えない。という条件が揃った時である。」と書かれています。 ビジネスでは相手が納得しただけでは必ずしも行動に至りません。あなたがどんなに優れた提案をしても、どんなに素晴らしい商品やサービスを提供しようとしても、相手が「どうせ自分とは関係がない」「まだ自分には必要が無い」と思っていると行動にはいたりません。また、実際に行動を起こすには強いエネルギーが必要ですが、このエネルギーを出させないと相手は動かないのです。 ここに相対的略奪感をベースにしたテクニックが考えられます。例えばあなたが金融商品や資産形成のアドバイスを行なっていたとして、「これらの金融商品を買ってください。」「資産形成のアドバイスをします。」という説明で相手は行動を起こしてくれることはほとんどありません。そこで次のようなセールスはどうでしょうか。 「あなたは幸せになりたくないですか。なりたいですよね。実はあなたと同世代である４０歳代の平均年収は＊＊＊＊＊円で、持ち家保有率は＊＊パーセントです。その資産価値は平均＊＊＊千万円です。「えーっ、そんなにあるの？」と思われる方が多いかもしれませんね。でもこれは＊＊＊総研が発表している統計データです。もし、今のあなたにこれだけの資産が無いとしても、これから３年であなたが今より年収を上げて、マイホームを手に入れることは不可能ではありません。毎日毎日会社のために真面目に働き、家族のために心身をすり減らして働いているあなたこそが幸せを手に入れるべきなのです。もしあなたが経済的な幸せを手に入れたいと願うなら、それを実現するポイントは戦略的な資産計画にあるのです。もしあなたに平均水準の資産が無かったとしても、それは今までのあなたの努力や頑張りが悪いのでもなく、あなたのやってきたことが間違っていたからでもありません。それは単に資産の築き方の要点を知っているか知らないかの差でしかないのです。今日から資産形成を目指しませんか。」 この説明文は利己的な想定的略奪感が生じるための順序である「①個人がある事物Ａを望んでいる。②他者がＡを手に入れているのを知る。③自分にもＡを手に入れる資格があると感じる。④Ａを手に入れることは不可能ではないと考える。⑤自分がそれを手に入れていないのは自分が悪いからだと思えない。」をベースに書いたものです。単に「金融商品や資産形成のアドバイスをしますよ。」というより相手は本来自分が得るべきものを手に入れていないことに気がつき、それを手に入れたいと思う誘導になっていると思います。 チラシやＤＭ、ホームページ、メールの作成を行なう際に「上手い文章が書けない」と悩む人の多くは「無から有を作ろう」とするから難しくなります。このように理論的なベースに則って文章を考えると、効果的なセールストークや文章の作成が可能になります。 テクニック48 ＜人が人をよぶ＞ 私は初詣の参拝客３０万人が訪れる神社の境内で大晦日に露店販売を経験したことがあります。でも私の露店の前にはお客が寄り付きませんでした。声を嗄らして呼び込みを行ないましたが、さっぱりお客は来ませんでした。目の前に何万人もの人が歩いているのに誰も立ち止まらないのです。それはとても不思議な経験でした。 年が明け友人知人たちが露店に遊びに来てくれました。友人知人たちはしばらく露店の前に立って何気なく陳列した品物を見ていました。その時です。徐々に露店の前に人が集まりだしました。しばらくして、お客さんが大勢押し寄せて注文がさばけない程の状況になりました。・・・・その日の夜、私は「昨日と今日のこの差は一体なんだろう？」と考えました。 その時に私はサクラの重要性＝「お店というのはある程度混んでいることが重要であるのだ。その混雑を見て次の客が客を呼ぶのだ」と理解しました。流行っているラーメン屋もそうですよね。中にはアルバイトで店先に行列を作るお店もあると聞きます。商売をやったことのない人は「本当かしら？」と思うかもしれませんが、人が人を呼ぶ効果は大きなものです。 だからインターネットのビジネスでも同様に、お店に人が来ていることを知らしめる必要があります。インターネット通販の本には「問い合わせにはすぐに返事をしましょう！」「発送は即時の出荷を心がけましょう。」と書かれていますが、全ての問い合わせやオーダーに迅速に丁寧に答えるのは物理的に不可能です。 個人的には「お問い合わせを沢山頂いており、ご質問を頂いてもすぐにお返事できない場合もございます。」といった表示で問い合わせやオーダーが多く、混んでいる状況を伝えたり、「おかげさまで既に５，３６１名の方にご利用いただいています。」とか「今月は２３０名の方に問い合わせを頂きました。」といった表現で、あなたのお店（ホームページ）は人が来ているお店であることを明示したほうが 人が人をよぶことになると思っています。 テクニック49 ＜同調＞ 心理学の実験に次のようなものがあります。 集団の中に一人の被験者を入れます。その他の集団構成員は皆「サクラ」です。集団に対して簡単な問題が提示されます。この時にサクラが「わざと間違った答え」を述べます。それに続いて集団内のサクラが次々と「わざと間違った答え」に賛同するように、「間違った答え」を支持し続けます。すると一人の被験者も「その答えは間違っている」ことに気が付いていても「わざと間違った答え」を支持する確率が高まるそうです。これを同調と言います。 そして賛同する人数が３～４人の時に、この同調効果は最大になると言われています。 私が自己啓発セミナーの勧誘を受けたときも確か３人で囲まれて説得されました。小さな部屋で英会話教材のセールスを受けたときも３、４人の勧誘員がいました。広告代理店時代のプレゼンテーション時に代理店、ディレクター、コピーライター、デザイナー、カメラマンなどのうち３、４名で参加することが多くありました。これらはおそらく偶然ではないのです。こういった方法を経験則的に知っている人はそれを意図的に利用しているのだと思います。知らないのは「説得される側」だけなのです。 これをビジネスに応用する例としては、広告物に掲載する喜びの声は最低３人以上掲載する、権威効果を利用する際にも推薦の言葉を３名以上にもらう、社員がいる場合には３人それぞれからフォローを行なう、また、お客様へのプレゼンは3名から４名で行なう、といったことが考えられます。 テクニック50 ＜吊り橋実験＞ 吊り橋（バンジージャンプでもジェットコースターでも良いですが）のような高いところに立つと人間はドキドキして、鼓動が早まったり、手に汗をかいたり、興奮したりします。その時に目の前に異性がいたら、自分のドキドキや手の汗、鼓動の高鳴り、興奮の原因は「高所の吊り橋という環境」なのか「異性の魅力」なのか、人間には明確には区別できない、ということが実験から分かっています。 もし、あなたが商品とは全く関係の無い、外見、話し方、小物、声質、文章、写真、音、映像、色等で相手をドキドキさせたり、手の汗を感じさせたり、鼓動を高鳴らせ、興奮させることが出来れば、そのタイミングであなたの通したい要求を提示することは効果的であると言えます。 文章作成能力がある方なら実体験をベースに「資金繰りが悪化し、明日の電車賃も無く、取立て屋が家にやってきた絶体絶命のその状態で私が見たものとは・・・」といったストーリー仕立てのDMやメルマガで見込み客をフォローすると、読み手にドキドキワクワクといった生理的喚起を誘導することができるかもしれません。 テクニック51 ＜スキーマ＞ 人間は外からの刺激を公正で、中立で、無心な心で受け入れているのではありません。自分が既に持っている経験や知識をフィルターとして刺激に対する理解を行なっています。 具体的に例を挙げましょう。 「ｈｔｍｌで記述したデータはＦＴＰソフトを使って、ルートディレクトリにあるａｂｃフォルダにアップロードしてください。またアップロードするデータのファイル名はｉｎｄｅｘ．ｈｔｍｌにしてください。」 この文章の意味が分かりますか？もし、分かれば話が早いですよね。でも、この文章が何を言っているのか分からない人も多いはずです。 同じ事を説明しているのに「分かる人」にとっては簡単で明快な説明となりますが、「分からない人」にとってはチンプンカンプンで不親切な説明と受け止められます。この差はその人の今までの知識や経験の差です。同じことを説明しても、過去の知識や経験によって人それぞれの受け止め方が違うのです。このようある刺激に対する理解を行なうためのベースになる知識や経験のかたまりをスキーマと言います。 よく「一生懸命話しているのに聴衆に伝わっていない講演者」がいます。これは講演者の話と聴衆者のスキーマが一致していないために起こります。この場合にはどんなに一生懸命に丁寧に具体的に説明してもその講演は無駄な努力に終わります。 ビジネスでも同様のことが起こります。「何故売れないのか？」・・・もしかしたらそれはあなたの説明が見込み客のスキーマに合っていないのかもしれません。つまり、商品が売れない最大の原因は「あなたの今の説明の仕方では商品の特徴や機能、性能、利便性、得、値打ちが伝わっていないため」なのかもしれません。 事実、仕事で相手から説明を受けても「高機能なのは分かるのだけれども一体それを何に使うのか？私はそれをどうやって自分の仕事やビジネスで有効に利用できるのかが全く分からない」場合があります。これはスキーマが合致していない時に起こります。もっと簡単に言うと「商品を使う相手の立場に立って説明する。」ことが出来ない人が多いために起こる現象です。 私はパソコン教室を運営していたことがありますが、知識は豊富なのに教えるのがヘタなインストラクターを数多く見てきました。知識と能力はあるのに生徒に人気がないのです。これも生徒のスキーマを理解していないことに起因しています。 このようなすれ違いを防ぐ方法は「ターゲットを明確に、具体的に想定する」ことです。ターゲットはどの程度の知識レベルを持っているのか、どの様な言葉を使うのか、どのような仕事に従事している人なのか、どのような学歴の持ち主なのか、何歳なのか・・・といったことまで具体的に絞込みを行なって初めて、そのターゲットに適した説明をするスタートラインにつくことができます。 ターゲットの絞込みを十分行い、ターゲット像を明確にし、ターゲットのスキーマを理解して初めて、伝えたいことをちゃんと伝えることが可能になります。 テクニック52 ＜名称（ネーミング）の影響＞ １９８１年に株式会社レナウンが、抗菌靴下「フレッシュライフ」を開発しましたがあまりヒットせず、「通勤快足」というネーミングをつけて、年間の売上を８倍に伸ばしたのは有名な話です。 また、アメリカの研究事例では過去の重犯罪者と似た名前の被告は有罪になる確率が異なることが発表されています。書籍は内容ではなく、ネーミングが売上げを大きく左右します。つまり人間はそのもの自体の価値ではなく、そのものに付随する名前に意思決定の影響を受けるということが言えます。 大手の企業では商品の価値や特性を広告宣伝や販促活動を通じて消費者に説明することができます。これは予算と人手があるから出来ることです。一方中小零細企業では広告宣伝や販促活動に投じることのできる予算と人手には制限があります。 そのため中小零細企業は商品自体が「商品価値や商品特性を訴求する」「宣伝する」「アピールする」ネーミングを持つ必要があります。 個人的には小林製薬の製品名やアリコジャパンのネーミングはターゲットと訴求ポイント、商品価値を凝縮した上手なネーミングだと思っています。この２社で販売している商品の商品名は決して洗練されたネーミングでも、洒落たネーミングでもありません。でも商品名を聞いただけでその商品の商品特性やターゲット層が明確に分かるものが多くあります。 のどぬ～る、ミミクリン、鼻スースークール、サカムケア、爪ピカッシュ、シコンコート、なめらかかと、ケシミン、しみとりーな、ヒリピタクール、ポット洗浄中、トイレ洗浄中、トイレその後に、これらは全て小林製薬の商品名です。 中小零細企業は「名より実」です。媒体や従業員が無くても商品自体が自分自身を説明し、ＰＲするにはネーミングは重要な要素です。 テクニック53 ＜オーバーハード・コミュニケーション＞ 通常、誰かを説得する場合には面と向かってその人に対してコミュニケーションを行ないます。これをレギュラー・コミュニケーションと言います。これに対して、人が話しているのを傍らで聞いて、その話の内容から影響を受けることをオーバーハード・コミュニケーションと言います。オーバーハード・コミュニケーションはレギュラー・コミュニケーションに比べて、受け手に受容されやすいことが実験の結果から明らかになっています。 つまり売り手から「これは良い商品です。」を説得されるより、街中で第三者同士が「あの製品は良い商品だ。」と言っているのを漏れ聞いた方が影響を受けやすいということです。 カタログハウスの「通販生活」では著名人が商品の使用感を語りますが、これもオーバーハード・コミュニケーションと同様の効果です。「著名人と編集者の話」や「使用者とインタビュアーの話」を「漏れ聞いている」ような紙面構成になっています。 このようなＰＲ方法はチラシやＤＭ、カタログ、インターネットビジネスでも利用可能です。 テクニック54 ＜ヒューリスティック＞ 私達は日々多くの選択と決断に迫られています。朝起きて何を食べるか、どのスーツを着るか、駅までの道順はどこを通るか、電車の何両目に乗るか、どの缶コーヒーを買うか、どの店で食べるのか、どの雑誌を買うのか、どのＴＶ番組を見るか・・・朝起きてから寝るまでの間に起こる出来事一つ一つを詳細に調べて比較検討し、その後決断を下すことは現実的には不可能です。 そこで私達人間は簡略的な判断基準によって判断を行なう場合があります。これをヒューリステッィクと言います。例えば「お昼はどこで食べようか？どの料理屋が美味しいのか？」「時間が空いたから映画を見よう。さて、どの映画が面白いのか？」等を決める場合には、いくつかの料理屋の味を調べて、材料を吟味して、価格を検討して、全てを総合的に比較して決断はしませんし、いちいち映画の原作を読み比べてどの映画を見るか決めるということもしないはずです。 その場合に「紹介」や「評判」「雑誌での人気投票」で判断したり、もっと単純に「行列の長さ」で判断したりします。 これが簡略な判断基準＝ヒューリスティックとなります。 ビジネスでもあなたの商品やサービスはお客さんが競合の商品とあなたの商品を実際に購入して、調査して、使い込んで、満足度を計測してから「正式に購入を決める」わけではないのです。そんなヒマはありません。だからビジネスでも予めヒューリスティックを用意しておくことが必要なのです。 例えば販売実績、喜びの声や満足度アンケート調査結果、効能証明実例データといったものや、店主や担当者の笑顔の写真、社屋の概観写真、受賞歴、マスコミ掲載歴、資格、肩書き、所属団体、社歴、経営理念などもヒューリステッィク形成に役立ちます。 インターネットの書店ａｍａｚｏｎには「カスタマーレビュー」がありますが、これも簡便な判断基準＝ヒューリスティックになっているのです。 （一方、一つ一つ順序だてて、逐次的に物事を調べ、手順を踏んで、処理し、解決する方法をアルゴリズムと言います。当然、ビジネスではヒューリステッィクだけでなく、アルゴリズムも満たす説明も必要です。具体的には機能や特徴、メリットや競合との比較といった論理的な説得説明になります。） テクニック55 ＜体験知識と共感＞ あることについてとても知識のある人というのは世の中に多く存在します。でも知識を行動のレベルで行なう人はとても少なくなります。その結果として「知識だけある人」が語る説明と、「知識も経験もある人」が語る説明では両者の間には大きな差が現れます。 「知識も経験もある人」が語る話は「体験知識」に基づいており、「実際にそれをやったことのある人にしか分からない話」ができるのです。介護の知識のある人がどんなに立派な話をしても、実際に介護の経験のある人が語る失敗談や悩み、苦しんだ経験には及ばないのです。 例えば、あなたが介護用品を販売するのであれば、「知識」ではなく「体験知識」を語ることにより、見込み客との間に類似性の共感が生まれます。類似性の共感が生まれると、親近感が湧き、その後のビジネス展開がスムーズになります。 だから、ビジネスでは自分の「得意なこと」「好きなこと」「経験してきたこと」を中核にすると、体験知識を語ることができるため、見込み客の心に共感を呼び起こし、それが信頼関係の構築に大きな影響を与えるのです。 テクニック56 ＜努力の正当化＞ 人からもらった野菜と自ら一年間手間隙かけて作った野菜、どちらが美味しく感じるでしょうか？またどちらにより高い価値を置くでしょうか。どちらも同じ畑で収穫されたものとします。 この場合、当然後者の方をより美味しく感じたり、より価値を高く感じたりします。一般的に何かを手に入れる際に「努力、苦労、手間、時間、お金、審査」等の障害がある場合には、そのものの価値を高く感じるようになります。その障害が大きければ大きいほど、それに比例してそのものの価値はさらに高まります。「苦労して手に入れたのだから、素晴らしいものに違いない。」ということです。これを努力の正当化と呼んでいます。 この理論に従えば、「労せず、すぐ手に入るモノ」は価値が低くなることになります。お客様のことを考えて「安い、早い、近い、簡単、便利」に入手できるのでは実際には価値が下がっている、ということになります。だから「安い」とも言えます。 もしあなたが付加価値の高い、高額商品を売るならば、見込み客に安易に商品を売ってはいけません。じらして、手間をかけさせて、時間をかけさせないといけないのです。必要であれば審査して、見込み客を選別することも必要なのです。それがお客の満足感を高める結果にもなるのです。 価値を高めるには意図的に「高い、遅い、遠い、面倒、複雑」なことも必要なのです。 「一見さんお断り」の老舗、「当社の化粧品は始めてのお客様にはお譲りできません。」というＣＭを流す化粧品会社、「予約１年待ち」の旅館・・・すべて「高い、遅い、遠い、面倒、複雑」です。でも、高収益体質の企業が多いのも事実です。 テクニック57 ＜初めの一歩＞ 私はちょくちょく近所のそば屋に行きます。麺類が好きなのでほぼ毎週行きます。道の途中にラーメン屋があります。ラーメン屋がそこにあることは前から知っていますが、一度も入ったことはありません。私はラーメンも大好きです。でも、そのラーメン屋には入ったことがありません。あるとき不思議に思いました。「何故、私はこのラーメン屋に入らないのだろう？」と。 マーケティングの超基本原則に次のようなものがあります。それは「新規客にモノを売るのは、既存客にモノを売るより数倍難しい。」です。これはホントのことであることは、実際に自分で商売をやってみると分かります。冒頭の話の場合、私は「ラーメン屋にとっては新規客」であり、「そば屋にとっては既存客」なのです。なにやら禅問答のような言い方になってしまいますがラーメン屋には「一度も入ったことがないから、入らない。」のです。 だから、「初めの一歩」を見込み客に踏み出させる仕組みをこちらが創ることが必要なのです。とにかく、「一回来店させる。」「一回買わせる。」ことが重要なのです。 そのために「無料サンプル」「お試しセット」が必要であり、買いやすい価格帯のフロントエンド商品が必要なのです。極論すると見込み客に一回来店してもらう段階では儲けがでなくてもいいのです。「既存客にモノを売るのは、新規客にモノを売るより数倍易しい。」からです。利益は後でじっくり出てくるのです。 テクニック58 ＜身近な例えと分割＞ 某保険会社のＣＭでは必ずと言っていいほど保険料の説明をする際に、「１日あたりわずか＊＊＊円」という説明を行なっています。「この商品は１０年間で４８万円です！」と言われると高い感じがしますが、右図のように「１日あたり１３４円です。」と言われると安い感じがします。でも「１３４円×３０日×１２ヶ月×１０年」だと「４８万２４００円」になりますので同じ商品金額です。 このように「１日たった＊＊＊円です。コーヒー１杯分で必要な保証が・・。」とか「月々わずか＊＊＊円です。飲み会をたった一回我慢すれば、生涯の資産が手に入るのです。」といった説明が広告でもしばしば見受けられます。 人間は日常的な具体例で説明されると、その瞬間に見込み客の頭の中で自分の生活シーンが想像され、その瞬間に今説明されていることが自分の問題として認識され始めます。そして最初は無理だと思っていた高価な金額も分割して示されると「そのくらいなら何とかなるかもしれないなあ。コーヒー一杯分だもんなあ。」と考える人が出てきます。 そうすると商品の購入を自分自身の問題として考え始め、自分にも出来るかもしれない、という判断が出てきます。これが購入へ至る流れを作るのです。このように高額商品を分割計算し、その金額を身近な具体例で比較させる広告、セールス手法が「身近な例え」です。 テクニック59 ＜信憑性＞ 特にインターネットビジネスではお互いに顔が見えないために、一般的に見込み客が抱く商品や売り手に対しての信憑性は低くなります。では、その信憑性を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。 「説得と影響」（榊博文著／ブレーン出版）には信憑性について次のように記述されています。「ホヴラント、ジェニスおよびケリーはかつて信憑性の構成成分として専門性と信頼性の２つをあげた。」「ホライらの研究によれば、専門性とは、送り手の資格、たとえば教育、経験、能力などによっているという。また、学歴、職業にもよっているだろう。」「信頼性とはウィールズとグロッツ、またマクギニスとウォードなどの研究によれば送り手の真面目さ、説得意図のなさ、説得の結果に対して利益をもたないこと、などに由来しているという。」 そのため、信憑性を高める具体的な方策としては次のようなものが考えられます。 専門性に関しては、 • 商品やサービスに関連する教育を教育課程、専門学校、師弟関係等を通して受けたことがある場合には、それを明言する。 • 商品やサービスに関連する実務的な経験がある場合には、それを明言する。 • 商品やサービスに関連する能力がある場合には、それを明言する。 （これは客観的な比較ができる数値実績、業務実績（施工例・工事例・取引先）、受賞歴、マスコミ掲載歴等で示すことができる。） 信頼性に関しては • 真面目に、正直に伝える。おちゃらけない。ふざけない。 • 売りの意識を出さない。 • 何かを見込み客に与えたからといってそれを理由に申し込みや購入を義務づけない。 といったことになると思います。 テクニック60 ＜ソーシャル・ラベリング・テクニック＞ 「あなたは本当に面倒見が良いですね。」「太っ腹ですねえ。」「気前が良いですね。」と言われると、それに見合った行為をとらざるを得なくなることがあります。 「あなたはいい人だ。」と言われるといい人を演じざるを得なくなることがあります。 このように人は他者に言われた通りの行動を演ずるようになる場合がありますが、これを意図的に利用することをソーシャル・ラベリング・テクニックと言います。例えば「いろいろあなたとお話させていただいて本当にあなたが慈悲深い方だと分かりました。あなたのような素敵な人とお会いできてとても嬉しいです。・・・是非、＊＊＊へご寄付いただけませんか？」と言われると寄付を断ることに対して心の中に抵抗感が出てきます。 ビジネスでも単にビジネス教材のセールスや健康器具の販売を行なうよりも、「自分への投資を怠らない方ですね。」というセールストークの流れの中で、教材セールスを行なったり、「ご両親思いですね。」とまず相手に枠をはめてから、「ご両親へいかがですか？」と健康マッサージ器をセールスするのでは結果は異なってくることになります。 テクニック61 ＜家族のためにテクニック＞ 「説得と影響」（榊博文著／ブレーン出版）には「家族のためにテクニック」について次のように書かれています。 「家族のためにテクニックとは説得者が、相手だけでなく、むしろその夫、妻、子ども、家族などに利益があることを強調して説得する方法である。この方法も筆者と説得問題研究会が宗教カルトや悪徳商法団体の説得、勧誘の手口を調査している過程で発見し、命名したものである。」 これもビジネスではよく見かけるセールステクニックです。 「大切なお子さんのためにも。お父さん！頑張りましょうよ。」「かわいいお孫さんがきっと喜びますよ。」「あなたの決断に奥さんはきっと感謝します。」といったセールストークで商品やサービスの購入を促す場合がこれに当たります。 自分にとっての買い物には後ろめたさが伴ったり、決断に躊躇する場合でも「これは家族のためにも良いことなんだ。」という大義名分ができると行動が起こしやすくなります。 テクニック62 ＜共通言語＞ 「印刷ロッドはいくつ？（＝何部印刷するの？）」「ちょっとシアンが強いなあ。（＝色味で青が強い。）」「色校正お願いします。（＝本印刷前の色刷り見本のチェックお願いします。）」・・・これらは広告・印刷業界に携わる人の共通言語です。 こういった共通言語で話すとコミュニケーションが効率的になり作業が早く進むとともに、これらの言葉は特定の業界の人にしか分からない合言葉であるために、お互いの仲間意識や一体感が生まれてきます。 「洗脳ごっこ」（藤井康宏著／毎日新聞社）には「恋人たちは二人だけの秘密をもつと親密になるものである。さらに、二人の間だけでしか通じない話題を交わし、二人にしか分からない「サイン」や「合言葉」を使うと、よりいっそう親密さは増していく。」と書かれています。著者の藤井氏はカルト集団内での信者の思想コントロールにおいても、このような共通言語が大きな役割をもっていることを指摘しています。 従って、ターゲット層にもよりますが、あなたが関連するビジネス分野での専門用語、固有名詞を意図的に使用することは、顧客とあなた、また顧客内での仲間内意識を向上させることに役立ちます。 また、あなた自身が名づけたネーミングであっても共通言語としての役割を果たすことができます。例えば、私は自分のビジネスを行なうに当たり、自分で名づけたネーミングがいくつかあります。これらのネーミングは一般人との会話で用いても相手には伝わりませんが、顧客とやり取りの中ではコミュニケーションが成立します。そのため、顧客とのやり取りの中でそれらのネーミングを意図的に多用することもあります。これにより顧客との感情面での結びつきを強くしているのです。 テクニック63 ＜感情・思考・行動＞ インターネットビジネスでは文章がコミュニケーション手段の中心になりますが、言葉で自分が伝えたいことを相手に伝えるのはなかなか難しいことです。また、文章が下手でも読み手に感性があれば理解できる場合もありますし、文章が上手なのに読み手の読解力が低い場合もあります。どのような文章にすれば相手の心に響くのでしょうか。 一つのテクニックとして文章は「感情・思考・行動」で表現すると相手に伝わりやすくなります。 例えば「私は友人とケンカをして、相手を殴ってしまった。」という文章はとてもフラットな感じがしますが、これを「感情・思考・行動」で表現すると次のようになります。 「カッとなって頭に血が上り、手はワナワナと震えだし、私は思わず怒鳴り声を上げていました。『こんなに一生懸命に努力しているのに、何故分かってくれないのだ。』という悔しさが頭をよぎっていました。そして次の瞬間、思わず手が出て相手の頬を殴ってしまったのです。」 私は文筆家ではありませんが、そんな私でも「感情・思考・行動」を意識して上記のような書き方をするだけで文章に立体感が出てくるのはお分かりいただけると思います。 ビジネスでは「分かってくれるだろう。」「伝わるだろう。」「理解してくれるだろう。」ではダメです。 相手が分かるように、相手に伝わるように、相手が理解しやすいようにコミュニケーションをとる必要があります。 そのためのテクニックの一つが「文章は感情・思考・行動で書く」です。 以上、ここまででビジネスに有効利用出来る心理学のテクニックについて解説を行ないました。 これらのテクニックをあなたのホームページ、メール、小冊子作成の際の文章の肉付けのスパイスとして利用してください。 |
| ※酒井とし夫の講演依頼と講師依頼の詳細と実績はこちらをクリックしてください。
参加者満足度・リピート率ともに抜群の講師 〒949-0303 新潟県糸魚川市田海2886-1 |
講演会講師依頼で新潟No.1講師
